夜通し降り続いた雨が嘘のようにあがった。
快晴。
宿のテラスから街を見下ろし、
よし、と大きく伸びをうった。
茶畑が美しい村
午前7時、
熟睡中の相方ヒロを起こさないように
そっと部屋を抜け出し、
朝のシャワータイム。
これがないと1日は始まらない。
ただ、残念なことに宿泊客が多すぎたせいで
湯量は乏しい…。
チョロチョロとしたたる程度しか出ない。
ちまちまと桶にためて、ザブンとそいつを被った。
朝食はバナナとライチ。
口に頬張りながら洗濯物をテラスに干した。
iPodで音楽を聞き、髪が乾くまで日光浴。
最後にたっぷりと水を飲んで準備完了!!
宿を出たのは午前9時。
フランス統治時代に開かれた紅茶のプランテーション、
シデクザムがあることで有名な
「サンバビー」という村を目指す。
お目当てのタクシーブルースを見つけ乗り込んだ。
料金は1400アリアリー(約100円)。
ローカルな乗り物なので、とにかく込み合う。
これまでは4人がけだったシートも、
ついに7人がけ!こりゃキツイ!!
身体を交互に前後させてなんとか座った。
300mに一回の割合で車は停車する。
各駅停車だから仕方ない…。
ただ、人を詰め込んでいるから乗り降りが大変。
人の上をダイブしながらの入替え戦だ。
小1時間も走ると、隣の席のあんちゃんが
「ここだよ、ここ!」と、合図してくれた。
スタンド バイ ミー
商店が2、3軒あるだけの小さな集落。
「まっすぐ行けば、茶畑だから」
たぶんそう言ってるのだろうと、
勝手に判断し、線路沿いの道を歩き始めた。
長閑(のどか)
この言葉がとても似合う場所だった。
「サラマ」
道行く子どもたちと挨拶を交わし、
前から歩いてくる牛の進路を邪魔し、
アヒルやカモを追いかけた。
ときどき線路の上を歩いては
「スタンド バイ ミー」を口ずさむ。
遠くに緑の絨毯が広がった。
目指す茶畑はあそこだ☆
何度も汗を拭いながら、
ぺたぺたとサンダルを鳴らした。
小高い丘一面が茶畑だった。
眼下には水田が広がっている。
「こりゃ、日本だよー」
茶畑の中を歩く
懐かしい香りと、夏の匂いがした。
茶畑の中を歩き、
新芽をひとつまみ口に含む。
奥歯でギュッと噛むと、
渋みが口に広がった…。
「うげっ、マズっ!!」
すぐにぺっと吐き出した。
日本だったら、コラー!!っと
すぐにつまみ出されるだろう。
その前に、わざわざバスに乗って
茶畑を目指すこともしないか…。
早起きして、知らない国の知らないバスに乗る。
そりゃあドキドキものだよ。
ちょっとした冒険。日本を思い出したくて、
ここに来たんだろうな、きっと。
夏の贈物だった
今度は遠くに湖が見えた。
名も知らぬ小さな湖。
その方向を見据えて歩き始める。
丘を下り、田んぼの畦道を横切り、
小川を飛び越えた。
冒険、冒険。
小学校の頃、この遊びが一番好きだった。
秘密基地を作ったりね。
子どもたちと木の実でキャッチボール。
イチローの真似をして
背面キャッチしたら大喜びだった。
線路に寝転んでみたり、写真を撮ったり。
ガイドブックに載っていない場所も
こうやって存分に楽しめる。
もう、世界中どこへだって行ける気がする。
湖を後にし、もと来た交差点に戻ってきた。
レモネードで涼をとっていると、
1台のタクシーブルースが横切った。
慌てて追いかけ、
「フィアナランツィア行き?」と尋ねると、
そうだ、と運転手はうなずく。
残ったレモネードを一気に飲み干し、
助手席に飛び乗った。
ガタガタと車体を震わせながら、
のどかな風景に溶け込んでいく―。
やさしい風に吹かれながら、
窓に肘をかけて眠った。
目を覚ますと、もう終点だった。
―また夏が終わる、もうサヨナラだね
この空の眩しさも、蝉の鳴き声も、
マダガスカルがくれた夏の贈物だった。
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