「Oh、KAZ!」
ジャイが大きな目をさらに見開いて駆け寄ってきた。
「ただいま、ジャイ」
ジャイは宿の女将さん(?)で、
昨夜からお世話になっている。
今日のミャンマー行きを心から心配してくれていた。
好レートで両替をしてくれたり、
バンコク行きのバスチケットを手配してくれたりと、
とても親切にしてくれるジャイ。
今朝も「ミャンマーに行きたいんだ」と告げると、
心配しながらも、
せっせと地図を書き、行き方を詳しく説明してくれた。
「何かあったら電話して」と、
コインと緊急時のためのお金をポケットに忍ばせてくれた。
ビザなしでミャンマーへ
ボートに乗り、対岸の国ミャンマーへ。
約20分の船旅。
潮の香りと、ボートの油が混ざったアジアらしい
どろっとした風を受けながら期待に胸を膨らませた。
大きな銃を抱えた兵士がギロリと鋭い目を光らせてボートを見る。
パスポートをチェックし、ようやく上陸だ。
イミグレを抜けると、
アジアンソウル渦巻く喧騒と混沌の街が広がっていた。
「これがミャンマーか…」
混沌の国
ご存知ように、今ミャンマーは深刻な事態に陥っている。
この国には、軍と政府による2重の傀儡政権が存在する。
そんな混乱の中で、物価が著しく高騰し、
庶民の生活は崩壊寸前だとか…。
治安も悪化の一途をたどり、
かつての信仰心に厚い「仏の国」はなりを潜めている。
(注:2008年の日記です)
街を歩いていても、まだ小学生くらいの子どもたちが
大人たちと一緒に熱心に働き、仕事のない人たちは、
舐めるように観光客を見つめ、食料やお金をせがむ。
一本路地を入れば、崩れかけた家、
そして死んだように眠る人々。
街にはピリピリとした異様な空気が立ち込めていた。
何度も後ろを振り返りながら、足を速める。
さっとカメラを出し、撮り終わればすぐにカバンの中へ。
戦場カメラマンにもなったような気分で、
暑さと緊張で汗が止まらなかった。
コートーンを歩く
ここはコートーンというミャンマー最南端の町。
アンダマン海に面した小さな町ラノーンから
湾をボートで渡ることができ、
ビザ取得なしに3日間滞在することができる。
港の前に小さなマーケットがあり,
その周辺には食堂や店が集まっていた。
高台に登るとミャンマー寺院があり、
タイよりもキュートで、
金ピカな印象の仏像が並んでいた。
海が近いからかとにかく蒸し暑いコートーン、
でもこの高台にある寺院は涼しい風が吹き、
床も冷たくて心地よかった。
しばらく横になり、
遠くの喧騒を子守唄にウトウトとした。
未来の種
街の路地裏で“未来の種”を見つけた。
異邦人を珍しげに見つめ、
目が合うと嬉しそうに
ヨロヨロと近寄ってくる子どもたちだ。
「ハロー」(KAZ)
「キャハハハハ」(子どもたち)
ただただ笑っている。
よし、とカメラを向ける。
ますます珍しそうにこちらを見つめる。
偉そうなことは言えないが、心が少しうずいた。
この笑顔が絶えないでほしい、と。
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