エピローグ#09  斜塔と斜陽

「サン・マリノ」に行くつもりだった…。

ヨーロッパの旅は長距離バスがほとんどない。
本当はあるのかも知れないけど、
ガイドブックに乗ってないし、情報も持ち合わせていない。
だからフィレンツェに行けば、
サンマリノ行きのバスが見つかると思っていた。

 

サンマリノへの道

ところが。
宿の主人に聞くと「そんなバスはない。鉄道で行け」
そう言われた。
路線図を見るとここフィレンツェからよりも
ヴェネチアからが近い…。

ここからでは逆戻りした上に、2回の乗り換えを要する。
インターネットで調べてもらうと片道4時間、
日帰りできなくもないが厳しい道のりである。
ならばと思い運転手付でレンタカーを当たってみたが
料金は250ユーロ(約38000円)とこれまた厳しい。

だからサン・マリノを諦めることにした。
第六章ヨーロッパ編は4ヶ国の旅に変更である。
イタリアの中にあり、世界で5番目に小さな国サン・マリノ。
次に訪れるチャンスはいつ巡ってくるのやら。

 

ピサに向かう

というわけで、行き先を「ピサ」に変えた。
ピサと言えば“斜塔”があまりにも有名だ。
ピサの斜塔は、ピサ市にあるピサ大聖堂の鐘楼であり、
世界遺産「ピサのドゥオモ広場」を構成する観光スポット。
高さは地上55m、階段は297段ある。
一時傾斜の増大と倒壊の危惧があったが現在は解決し、
傾斜角は約3.97度のまま進行は止まっているそうだ。

ピサまでは列車で1時間半。
毎時1本、直通の列車が運行されているので
これは楽だ、と思っていたのがいけなかった…。
切符を買い、よく確かめずに乗った列車、
それは逆方向のローマ行きだった…。

気がついたのは乗車して30分後。
どれくらい来たかな?
と、路線図と駅名を照らし合わせてみるも見当たらない。
よくよく探してみると想定外の方向に列車は進んでいた。
どうしたものかと車掌に尋ねてみると
「次で降りてフィレンツェに戻ればいい」とお気楽な回答。
ここまでの運賃とフィレンツェに戻る分は
目をつぶってくれるようだ。
幸い乗車時刻の指定がないチケットを持っていたため
買い直しの必要もなかった。

ただ、小さな駅に降りてしまったため
フィレンツェ行きの列車を2時間待つことになった。
まぁ、これも旅の醍醐味。
名前も知らない町を歩き、オレンジを1つ買った。
気分は梶井基次郎の『檸檬』だ。

駅のホームに座り、
通過していく急行列車を何本も見送った。
列車が残した風が気持ちいい。
あくびをしながらオレンジをかじる。
忙しい旅が好きでこういうアクシデントがない限り
立ち止まって、ひと息つくことができない。
のんびりいこうよ、
イタリアの神様がそう行ってポンと肩を叩いた。

■フィレンツェ→ピサ
(所要時間:1.5h/運賃:5.7ユーロ ※約800円)

 

斜塔

ピサに着いたのは午後2時だった。
なんだよ、サン・マリノに行くよりも時間がかかったよw
城壁をくぐり、真っ直ぐ歩いていくと
おう、確かに傾いている塔が見えてきた。
まるで斜塔を押して手や足で倒れるのを防ぐような
ポーズをとる定番の撮影会が行われているw
さすがは有名観光地、平日なのに人で溢れかえっていた。

さっそくカメラを向けて斜塔を撮る。
ところが、画面を確認してみると思ったよりも傾いていない。
あれれ?
もう一度トライするも結果は同じだ。
そうか、広角レンズがいけないんだ!
レンズのカーブで斜塔の角度が修正され
まっすぐになって写っていた。
ならばとカメラを縦に構える。
あっけなく問題は解決した。

つづいて定番のポーズにも挑戦。
ちょっとズルしてカメラをわざと斜めにして
シャッターを押してもらった。
実はこの撮影、思った以上に難しい。
それは技術ではなく、人が多すぎてカッコ悪いポーズのまま
人が通り過ぎるのを待ち構える必要があるのだ…。
いやはや、これだけの人に支えられているんだもの、
ピサの斜塔は倒れないって。

斜塔には登らなかった。
この塔は外から見てナンボのはず。
ピサに着いて1時間足らず、
お決まりの写真を撮ったし帰るとしよう。

 

ドゥオーモの鐘

フィレンツェに戻り、斜陽の街を散歩した。
ドゥオーモの鐘が街に響き、
長く伸びた自分の影を追いかけた。
街角では画家たちが筆を走らせている。

何気なく入った店で靴を買った。
ウッドソールの渋茶色した革靴。
こいつで石畳の上を歩いたらきっといい音が響くだろう。
“メイド イン イタリー”の文字が誇らしげだ。

さあ、ラストラン。
ローマに向けて最後の移動をしよう。

 

旅のカケラ/slideshow

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です