さよなら、南米

コロンビアを離れる日。カーテンから木漏れ日。
今日も快晴だ。

 

最後のボゴタ

飛行機の時間は午後6時なので、
出発まで街をぶらつくことにした。
標高が高いここボゴタは、
乾いた風が心地よく、春のような穏やかな気候。
日曜日だからか、街はウキウキした雰囲気が漂っている。

教会の前にはたくさんの人がいて
手に大きな葉っぱを持っている。なんだろう?
バタバタバタと飛び立つ鳩が青空に舞った。
そして鐘が鳴る。

 

旧市街を彷徨う

いくつもの細い路地を抜け、
旧市街を上へ上へと登って行った。
街を見下ろしてみたい。
しばらく歩いていると窓から声がした。
「#$%^&*()&&」
うーむ、スペイン語じゃわからない。
するとゼスチャーで、
「この先、危ない、ピストル、撃たれる」

……怖っ。

たしかに人通りが少ないし、家がどんどんスラム化している。
ボゴタのスラム街は麻薬市場もあり危険な場所。
おとなしく引き返すことにした。

今度は坂をどんどん下り、賑やかな広場に出た。
全身に携帯電話をぶら下げた“歩く電話屋さん”や
風船売り、写真屋さんが声をかけてくる。
道路は歩行者天国になっていて、縁日のように賑やかだった。
南米らしいなぁ…今さらながらに陽気な街を実感。

 

南米のラストシーン

アルゼンチンの最南端「ウシュアイア」からここボゴタまで、
いったいどれくらいの距離を北上して来たのだろう?
30時間にも及ぶ長距離バスを何本も乗り継ぎ、
アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、
コロンビアと、計8ヶ国を通り抜けてきた。
ベネズエラ、スリナム、ガイアナ、仏領ギアナは取りこぼしたものの
広い広い南米を駆け回った。

AROUND THE WORLD
まもなく完結だ。

タクシーに乗り込み空港へ。
午後6時過ぎ、赤く染まった空に飛び立った。
さよなら、南米ーー。

 

中米の小さな国たち

1時間半のフライトを終え、タラップに降り立つと
むっとする暑さに包まれた。
アジアに似た懐かしい暑さ。
はじまりのシンガポールが脳裏をよぎる。

入国審査。
中米諸国は片道航空券での入国を認めてくれないことが多い。
だから満を持して往復チケットを用意。
これなら文句はないだろう。(復路は捨てちゃうけどね)
自信満々に列に並び、窓口の前で「出国は?」の質問を待った。

「やあ、ハポネス(日本人) コンニチハ!」

陽気な審査官だった。
スタンプだらけのパスポートを珍しそうに眺め、
「何日滞在するの?」と問われた。
「ええっと、1ヶ月くらい」
「OK!」と力強くスタンプが押される。
あれれ? 出国用のチケット見せろって言わないの?
せっかく用意したんだから調べてよ。
「チャオ!(またね)」
陽気に親指を突き出し、笑顔で見送られた。
なんだか拍子抜け…。そう、いいんだよ、これで。

 

新鮮さと懐かしさ

午後8時を回っていたので宿へはタクシーで向かった。
空港のタクシーはとにかく高い!
28ドルと言われ、あきらめてバスにしようかと迷っていたら
「ちょっと待ってな」と、
相乗りする乗客を探してくれた。
意外と親切じゃん、この国。
3人なら1人10ドルだったのに、
2人しか集まらず、15ドルずつ出し合って相乗りすることに。

市街地までおよそ20km、夜の高速道路をかっ飛ばした。
首都高みたい…。
高層ビルが建ち並び、その間を細くうねる道路。
光の粒子が煌いている。
星のない空と街のネオン。
シンガポールにも似てるけど、夜の東京を強く感じた。

 

懐かしいな、帰りたいな。
感傷に似た気持ちが込みあがる。
あと少しだ―

旅の最終章『中米編』
52ヶ国目「パナマ」からはじまるラスト・ラン。

 

旅のカケラ/slideshow

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