スローライフ、はじめました

イースター島の宿『ミニノア』は
小さな格差社会である。

 

個室の優越感

運よくというか、贅沢をして個室を取ったため
1泊の料金は15000ペソ(約2500円)と、
テント客の実に3倍の料金である。
でも、その差は歴然だった。
キッチンはキレイだし、食器や調理器具が充実。

ちなみにテント組は、
番号が書かれた皿を各自3枚ずつ支給され、
競争の激しいキッチンで切磋琢磨している。
シャワーはホットシャワー(テント組は水シャワー)だし、
共有スペースも屋内(テント組は外)。

 

 

一番大きな違いは電気が自由に使えること。
テント組は深夜0時になると消灯なうえに、
コンセントを使用するのに
1日2000ペソ(約300円)徴収される。
ナミビアで出合ったタカさん夫妻も、個室暮らしを見て
「げっ、暮らしのレベルが違う…」と驚いていた。
こんな孤島にも“格差”の波は押し寄せているのだ。

 

島歩き

さて、今日はレンタバイクで島を一周するつもりだ。
スローな島時間に流され、気がつけばすでに正午!
いくら日が長いとは言え、いい加減出かけなければ…。
セントロと呼ばれる町の中心までは長い、長い一本道。
日陰を選び、道行く馬や昼寝中の犬を追い越して歩いた。

「ノ、ノ(ないよ、ない)」

えぇ、遅かったか…。
昨日見つけた一番安いレンタバイクはすべて出払っていた。
この店は1日16ドルで、他の店は20ドル。
日本にいるときの400円差なら大して気にならなかったが、
この旅では100円=1000円くらいの金銭感覚だから
今日はあきらめておとなしく宿に帰ろう。

土産店を覗きながら、とぼとぼと元来た道を引き返した。
宿に着くと同時に大粒の雨が落ちてきた。
雨は嫌いだが、バイクを借りなくてラッキー。
軒下のベンチに腰掛けて
大慌てでテントを守る人たちを眺めていた。

「カズさん、マグロ要ります?」
タカさん夫妻が声をかけてきた。
ここイースター島ではマグロが水揚げされ、
市場で丸ごと1匹買うことができる。
1匹あたり7~10㎏あり、値段は1㎏あたり約500円。
当然ひとりじゃ食べきれないので、何人か仲間を集い、
シェアするのが日本人バックパッカー。
皆、このマグロに期待し、
醤油とワサビを持ってイースター島に渡っている。

 

日本人だらけ

そうそう、この島は日本人だらけで、
今いる宿にも常時10人は日本人旅行者がいるし、
島全体で言えば100人近い数字になる。
こんなにも遠い島なのに、日本人ってモアイ好きなんだね。
島の人からしたら、
モアイよりも不思議な存在なんじゃないかな?

市場にマグロを調達に行っている間、
ベッドに横になり、降ったり止んだりする雨音を聞いていた。
ときおり強い風が抜けて椰子の葉がざわめく。
雨の匂いと、潮の香りが混ざり合った午後は、
穏やかな時間に身を任せた。
そしていつしか眠りについた…。

目が覚めると、暑さが和らぎ雨も上がっていた。
雲の切れ間から光のカーテンが垂れ、
心地良いような、淋しいような気分にさせた。

「マグロ、今はシーズンじゃないそうで、
入荷は難しいそうです…」

残念ながらマグロにはありつけなかった。
「で、甲太郎で海鮮丼食べて来ちゃいました♪」
え、マジで!?
いくら、いくらよ?
『甲太郎』とは、イースター島にある日本食レストランで、
ラーメンや定食、寿司が食べられる。
中でもおススメは「海鮮丼」で、
お値段なんと7500ペソ(約1400円)…。
うーん、高いけどソソられる!

To Be or Not To Be
行くべきか、行かざるべきか…それが問題だ。

やっぱ無理だよなぁ、でも最終日にお金が余ってたら(期待)
格差社会の下克上か!?
くぅ、海鮮丼食べたいよー。
テントにして、その浮いたお金で美味しいものを食べる
という選択肢もあったな…。

 

スローライフ

最近はめっきり料理に目覚め、
毎日のように自炊をしていて、しかも楽しい。
料理の知識はないが、向いてなくはないようだ。
自慢ではないがかなり手際がいいと思うし。
そこで今夜はカレーを作ることにした。
海鮮丼に負けず劣らずの魅惑のメニュー♪

商店でじゃがいもと玉ねぎを買い、
ニンジンと肉は散々迷った挙句に断念した。
キッチンにピューラーがあったので
じゃがいもの皮も楽勝!
玉ねぎと一緒に炒めてからルーと一緒に鍋に放り込んだ。
ご飯もうまく炊き上がった。

「今夜は何作るんすか?」
来たな(ニヤリ)
海鮮丼のお返しとばかりにカレー自慢をし、
モアイのように胸を張った。どうだ(笑

カレーはすこぶる旨かった。
たっぷり2合半を完食し、
その夜はなかなか寝付けないほどお腹が張った。
でも幸せ。

イースター島で過ごすスローライフは、
旅の終わりを感じさせた。
もう、これ以上の感動には出会えない気がする。
心のベスト10、第1位にこの島を挙げたい。

 

旅のカケラ/slideshow

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