1年に1度? ~パタゴニア4日目~

氷河の興奮も冷めやらぬままバスに乗り込む。
深夜3時、“果て”を目指してバスは闇を切った。

 

世界最南端の町へ向かうバス

エル・カラファテの町を後にし、
次に向かうはパタゴニアの果て「ウシュアイア」。
世界最南端の町で、南極までわずか1000km。
まずは「リオ・ガジュゴス」の街まで行き、
そこでバスを乗り換えてウシュアイアを目指すことになる。

■エル・カラファテ→リオ・ガジュゴス
運賃:45ペソ(約1350円)

■リオ・ガジュゴス→ウシュアイア
運賃:180ペソ(約5400円)

 

午前7時にリオ・ガジュゴスに着き、
1時間の乗り継ぎでウシュアイア行きに接続した。
アルゼンチンはバスの質がいい。
広くて快適な上に、軽食もサーブされる。
乾いたサンドイッチとビスケットだったが、
ジュースもお替りさせてくれたし、気分がいい。

 

 

広大な草原がつづく

南部パタゴニアはアルゼンチン・チリにまたがっているため、
ウシュアイアに向かうにはチリを通過する必要がある。
せっかく気持ちよく寝てたのに…
はいはい行きますよ、とイミグレの列に並び、
スタンプを1つもらってバスに戻る。
隣のおばちゃんがよく面倒を見てくれる人で、
言葉は通じないが、こっちだよと誘導してくれるし、
審査が終わるまで見守っていてくれた。

そういえば、アジアやアフリカのように
「Oh、ジャパニー!」と擦り寄ってくる輩はいないし、
パンダを見るような好奇の眼差しもない。
アルゼンチン、大人な国だぜ。

車窓はずっとパンパと呼ばれる広大な草原がつづく。
読書と睡眠を繰り返し、
たまにカメラを取り出して流れる景色にピントを合わせた。
果てへ、果てへ―。
バスはどんどん突き進んでいく。

 

マゼラン海峡

正午過ぎにマゼラン海峡に差し掛かった。
マゼラン海峡は、南アメリカ大陸南端とフエゴ島とを隔てる海峡で、
太平洋と大西洋を結ぶ。
ここは航海の難所として有名で、
狭い海峡に速い潮流と幾多の暗礁が広がっているとか。

かのマゼラン隊がわずか7日で通過できたのは
当時としては神業に近いだろう。
バスはそのままフェリーに乗り込み、
約30分かけて海峡を渡るわけだが、
いかんせん航海の難所。
風が非常に強く、風で波が海面を舞っているため
目前まで迫っていたフェリーがターミナルに引き返してしまった。
風と波が収まるのを待つという。

試しにバスを降りてみたが、
台風ばりの強風に、まっすぐ歩けない!
何度も吹き飛ばされそうになりながら
海峡スレスレまで近づき、写真を撮った。

ふと横を見ると、なぜかこんな強風の中で
シーソーを漕いでいるふたりを発見!?
フードを被り、全身黒ずくめの姿は異様だった。
いろんな人がいるよね…。

 

永遠につづくバス

バスに戻り、天候の回復を待つことにした。
持ってきた本は600ページもあったのに
この待ち時間で読みきってしまった。
iPodを取り出し、音楽を聴く。
そのまま眠りに堕ち、気がつくと空が赤く滲んでいた。

午後8時、すでに7時間以上待ってる…。
マゼラン海峡恐るべし!
結局、この海峡を渡り終えたのは午後9時半。
フェリーにバスが乗り込むと、
乗客は一斉に拍手し歓喜の声をあげた。
そういえば南米では飛行機が着陸すると
拍手が沸き起こる。
これがラテンの血というやつか?

ウシュアイアの到着予定時刻はとっくに過ぎ、
延長戦に突入した。
でも、悪い気分じゃなかった。
“果て”への旅だし、これくらいの演出があった方がいい。
そして夜中に到着するよりも、
朝着くほうが1泊浮いてありがたいしね。
そんなことを考えながら皆と一緒に拍手した。

深夜に国境を越え、再びアルゼンチンに入った。
寝起きのぼんやり頭も、夜の寒さで一気に目が覚めた。
目が覚めると今度は空腹に襲われた。
そう言えば、昼にサンドイッチを食べたっきり
何も口にしていない。
ちょうどイミグレの外で、
ハンバーガーやチョリソパンを売っている屋台を発見。
特大のハンバーガーと、オレンジジュースを購入し
車内に戻った。

車窓に映る自分と対峙する格好で、
暗闇の中、ハンバーガーを頬張り、
遠くに来たもんだ、、、と少し笑った。

 

お腹が満たされるとそのまま深い眠りにつき
知らないままに“果て”へと運ばれていった。
ちなみに、マゼラン海峡でこれだけ待たされるのは
年に1度あるかないかだそうだ…。
まったく運がいいのか、悪いのか?

 

旅のカケラ/slideshow

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