誰も知らない最終回

グアテマラのパナハッチェル、ここは湖畔の町。
標高も高く涼しい。

 

世界で最も美しい湖

アティトラン湖は世界で最も美しい湖と言われていて
山々を背景に、透明度の高い湖面が広がっていた。
湖の周辺には先住民の村が点在し、
かすりに似たカラフルな伝統衣装を身にまとった人々が生活している。
そんな村を目指してボートに乗った。

■パナハッチェル→サンティアゴ・アティトラン
(所要時間:約20分/運賃:25ケツァール ※約300円)

シュプールを描き、湖面を滑るように進むボート。
まずは対岸にある「サンティアゴ・アティトラン」に行くことにした。
ここは最も大きい先住民の村で、
ウイピルと呼ばれる刺繍シャツに、かすり模様のスカートを履いた
女性たちが印象的だった。

 

長閑な湖畔の村

湖畔から村の中心までは土産店で埋め尽くされ
美しい刺繍の布や素朴な木彫りが所狭しと並べられている。
「いいなぁ」
手にとって眺めてみる。日本の小京都にいる気分だ。
帰国が近いこともあってか、最近はあまり荷物の量に神経質にならなくなり
ついつい買物に手が伸びてしまう。
ビーズでできた小さな蛙とケツァールの置物を購入した。

通りをそぞろ歩きながら市場や広場、教会を覗く。
視線は常に先住民の女性を追っていて、
写真、撮りたいなぁ…と呟きながら様子を伺ってしまう。
街角を撮るふりして望遠でパシャリ。姑息な自分…。
しかしまぁ、大人から子供までみんなお揃いの衣装。
伝統って不思議だね。
日本のかすりに似てるから
田舎町の夏祭りに参加したみたいでこころが和んだ。

 

サン・ルーカス・トリマン

よし、次の村に行こう。
ピックアップというトラックの荷台に乗り込み
「サン・ルーカス・トリマン」へ移動した。
(所要時間:約30分/運賃:10ケツァール ※約120円)

荷台に立って手すりをギュっとつかみ、
行け、行けー!と風を切る。
湖や村を見下ろしながら峠を越えた。
サン・ルーカス・トリマンは週に3回開かれる市が有名。
残念ながら今日は開催日にあたらず、村は閑散としていた。

それでも湖畔まで降りていくと対岸にパナハッチェルが望め
美しい景観だった。
子供たちが勢いよく飛び込みをしていて
その様子を木陰に座って眺めていた。

 

サンタ・カタリーナ・パロポ

日が傾きかけた午後4時、
「サンタ・カタリーナ・パロポ」の村に降り立った。
この村の女性たちはみな青いウイピルを着ていて
数ある湖畔の村の中でも最も美しい色調だと言われている。

教会前の広場にたくさんの人が集まっていたので
隅っこのベンチに座り、
静かに空から降りてくる黄昏を感じながら
その村の景色に溶け込んだ。
何も考えずに、ただぼんやりと。

パナハッチェルの村に戻るとすっかり夜だった。
再び旅の相方ヒロと合流し、一緒に町を散歩した。
そして明かりの消えた古いカテドラルの前に座り、
長かった旅を振り返った。

 

「これ、誰も知らない最終回だね」

実はアジア、アフリカと1年間に渡り
ふたりであるテレビを制作しながら旅を続けた。
『平成ころんぶす』
旅の珍道中を描いたドキュメンタリー番組である。
南アフリカの喜望峰で最終回を迎え、
その後ふたりは別々の旅路を選んだ。
別れてから2ヶ月、それぞれの旅がここでもう1度交差した。

「また何年後かにつづきをやってたりして…笑」

先のことはわからない。
でも、そんな未来もまた楽しいかもしれない。

「じゃあ、今度こそ日本で」

硬い握手で別れた。
見送られるのは苦手なのでそのまま振り返らずに
すたすたと早足で。

 

湖畔の夜風

この旅は何だったのだろう?
多くのものを失い、多くのものを手に入れた。
まもなく帰国するが、この旅の答えはきっとわからないだろう。
答えが出るのはずっとずっと先。
それでいい。
旅に何かを求めるのではなく、
旅をした、という記憶が残ればそれでいい。
ワンシーン、ワンシーンがふいに思い出され
パズルのピースのようにピタっとはまる。
その瞬間が何度も訪れ、それが活力になる。

それがいい。
夜風が気持ち良かったので
もう一度湖畔に行き、静かな水面を眺めた。
静か過ぎて、
旅の終わりを一層感じた夜だった。

 

旅のカケラ/slideshow

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