だから旅は面白い。
偶然が偶然を呼び、歓喜に沸いた。
世界一大きな木
今はインドのコルカタ。
コルカタは思った以上に都会で、
正直これといって見所がない…。
それでもガイドブックで見つけた
世界一大きな木、グレートバニアンツリーを見に行くことに。
バニヤンは枝が地面に降りて幹を成すため、
一見森のように見えるが、1本の木なのだ。
樹齢250年、2000本以上の枝があり、
なんと直径1キロ以上の大きさだとか。
地味な絵だったが、それなりに満足できた。
パラゴンの夜
さてその夜、ちょっとしたドラマが待っていた。
伝説の安宿「パラゴン」に泊まっている。
ここに来た理由は、“伝説”という言葉に惹かれたことと、
もうひとつの理由があった。
それは日本人から情報を仕入れるためだ。
ここは日本人が集う宿。常時10人は日本人客が泊まっている。
コルカタは、ネパール、バングラデシュへのアクセス都市。
たくさんの旅行者がこの街を基点に国境を越えている。
そして、次に狙っている「ブータン」もまたしかりだ。
インドの次はブータンに行くことにした。
ただし、ブータンはビザ取得が面倒なうえ、1日に200ドルという
公定料金を納めなければならない。
200ドルなんて、バックパカーの半月分の生活費なのに…。
ブータンに行きたい
その理由は、ブータンは外国文化の受け入れを拒否している鎖国国。
高い金額を設定してツーリストが訪れにくくしているのだ。
ただし、あるフリーゾーンを除いては。
ブータンには「プンツォリン」というインドとの国境の街がある。
2005年に廃止になったというが、この街だけはビザや公定料金が不要なのだ。
今でも運がいいとノーチェックですり抜けられると聞いている。
この可能性にかけ、ブータンを目指すことにした。
とはいえ、コルカタからブータンまでは片道2日。
せっかく行ったのに…、となる可能性は高い。
「パラゴン」にブータンへ行った人はいないものだろうか?
ロビーでたむろしている日本人に
「誰かブータンへ行った人いない?」と聞いてまわった。
すると、その会話を聞きつけてある男性が名乗り出た。
「俺、行ってきたよ。ちょうど今戻ってきたところ」
いた!!!
運命は巡る
フリーゾーンの話を告げると、
まさにそのルートで潜入に成功したという。
詳しく聞かせてほしい、
とノートを広げ、事情聴取を始めた。
彼は快く、いや少し興奮した様子で
その武勇伝を語り始めた。
へぇ、そうか、なるほど。
聞けば聞くほどイメージが固まっていく。
事前にシュミレーションしていた情報とは若干違っていた。
そして意外に成功率が高いことを知った。
話しているうちに彼がある違和感を覚え始めた。
「ブータンなんて行く人珍しいですよ。
でも前に一人だけ行きたいっていってた人に会ったな」
!!!
このひと言ですべてが繋がった。
「あれ、ひょとしてKAZさん?」
「え?カイト?」
実は彼とは中国で一度会っていたのだ。
なんで今まで気がつかなかったのだろう。
いや、それだけなら驚かない。
この出会いがお互いの旅を大きく変えていたのだから。
彼は言う。
「中国で借りた情報ノートに影響されて、ルートを変えたんですよ!
ブータンに行こうって思ったのもそのためですから」
たしかに彼に自作のノートを一晩貸した。
彼は徹夜してノートを写し、お礼にと、
中国語の解説メモ(自前)をノートに挟んで返してきたのだ。
彼の分かりやすいメモのお陰で中国語がスラスラ頭に入り、
その後の中国旅は楽しいものになった。
あるんだね、こうゆう偶然って。
自分のノートが彼のブータン行きを決めさせ、
まわりまわって彼からブータン情報を聞いているなんて…。
偶然?いやいや、必然と呼ぶべきでしょう。
再び彼に情報ノートを見せ、彼が写したというノートを見せてもらった。
「いやぁ懐かしい」と言いながら彼はノートをめくる。
「よく一晩で写したね」と言いながら彼のノートをまじまじと見た。
ブータンに行ってくるよ。
ありがとう、お陰で勇気が湧いた!
彼に礼を言い、必ずブータンに入ってみせると約束した。
地球は丸い。だから線で繋がっている。
人の輪もまたしかり。
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