レーを後にし、「ラマユル」という小さな村へやって来た。
レーからはバスで5時間、150ルピー(約400円)。
月の世界
ここラマユルは、インダス川沿いにあり、
スリナガルへ向かう道とダ・ハヌーへ向かうちょうど分岐点の村。
「月の世界」
そう呼ばれるとおり、草木のない荒涼とした岩肌に
ゴンパや家々が建っていた。
まぁ、ガイドブックから抜粋した情報だが、
ラマユル・ゴンパは11世紀に建てられ、
カギュ派の開祖マルパの師匠であるナローパが
この場所で瞑想したと言われている。
難しい話はさておき、とにかく圧倒的な景色に
月の世界…、こういうしか表現できない。
さて、相方とゴンパを訪れる予定だったが、
彼は朝早くからバスに乗り、隣の村へと出かけていった。
トラブルメーカー?
昨夜もサプライズを用意してくれたのだ。
ギターがない!
これは昨夜の出来事。
ラマユルに到着したのは午後9時半だったため、
村は真っ暗。バス停もない道の真ん中でバスを降ろされた。
目星をつけていたゲストハウスへ向かおうかとザックを担いだ矢先、
彼が大きく目を見開いてこう叫んだ。
「しまった、ギターがない!」
慌ててバスを降りたため、車内に置いてきてしまったようだ。
走り去るバスを見つめ、呆然としている。
「まだ、間に合うかも、追いかけよう」(KAZ)
「いや、もう無理じゃない…!?」(HIRO)
あきらめが早いのか、寝起きで状況が呑込めていないのか
すでに焦りの色は感じない。
えいっ!
ザックを彼に託し、バスを追いかけた。
暗闇に吸い込まれるように、小さくなっていくバス。
ここは標高3000m、
1分も走ると、息が切れ、ひどい頭痛に襲われた。
はぁ、はぁ、はぁ…、チキショー!
追いつける自信があったのに、ひどく衰えたものだ。
バスは遠くにかすんでいった。
ヨロヨロと相方の元に戻り、
次なる作戦を練った。
と言っても、朝を待ってバス会社に電話するしかないのだが。
ラマユル・ゴンパ
運が悪いことに、現在この村の電話は不通。
だから、彼は朝から隣の村まで出かけていったのだ。
ひとり月の世界を歩き、ゴンパを見学し、
村の高台にあるチョルテン(仏塔)でひと休みした。
誰もいない静かなお堂、途方もなく長い時間が刻まれたのがよくわかる。
質素な造りだったが、ありがたみを感じずにはいられない。
帰り道、小さな川にコーラを浸し、
冷たくなーれ、と念を込めた。
辛うじて商店が1つあるだけの小さな町なので
このコーラは宝物のように思えた。
当然、冷蔵庫には入っておらず、
だからこうして小川で冷やしている。
せせらぎを聞きながら、うとうとと、
今までで一番穏やかな春を感じていた。
さらばラダック
これでラダックともお別れだ。明日はスリナガルかぁ。
はたして彼のギターは、どうなったのだろう…?
夕方、疲れた顔でHIROが帰ってきた。
ギターの行方はわからないという…。
ここラダックに彼はギターを、
そして自分は「思い出」を置き去りにした。
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