目が覚めると6時半だった。
起きるには少し早いがもう部屋は明るい。
読みかけの本をめくった。
『巨流アマゾンを遡れ(著:高野秀行)』
アジアを彷徨う
出発してもうすぐ3ヶ月、
思った以上にペースが上がらず
いまだアジアを彷徨っている。
しかも、まったく訪れる予定のなかったキルギスにいる…。
神聖な中東、厳しいアフリカ、そして魅惑の中南米。
毎朝、ワクワクする気持ちが胸に込み上げ、
得意の二度寝ができない体質になった。
本をめくると大冒険が描かれている。
それを自分に置き換え、この旅のずっと先を見据える。
ますます胸が高鳴った。
早々にベッド抜け出し、バザールへ朝食の買出し。
ナンにバターを塗り、紅茶で流し込む。
キルギスに入ってから、
壊れたレコードのように同じ場面を繰り返している。
もう飽き飽きしているはずなのに、
それでも異国の味に、舌や胃は喜んでいる。
スレイマン山
朝食が済むと再び外へ飛び出し、
オシュの観光名所である「スレイマン山」を目指した。
ここは、街の中央にある岩山で旧約聖書に登場する
ソロモン王が礼拝を行った聖なる山。
街を見守るようにそびえている。
汗を拭いながら階段を上り切ると、
オシュの街が一望できた。
今日でキルギスともお別れ。
最後の締めにふさわしい場所だと思う。
ビザ待ち、国境待ちで、
思うように行かなかったキルギス。
この2週間を振り返ってみれば、
濃厚な思い出がたくさんできた。
この旅が終わったあとも、
この国のことは忘れないだろう。
でもまだひとつやり残したことがある。
宿がある団地の公園へ向かった。
その無垢な熱を
いたいた♪
今日は日曜日。
元気過ぎる子どもたちが走り回っている。
「ハロー!」
手を挙げ、カメラを向ける。
いっせいに駆け寄ってくる元気の塊。
キルギスではまだ、アジアの純真を撮っていなかった。
一緒に木に登り、追いかけっこをし、
カメラの手ほどきをした。
彼らはアジアのどの国にも負けないパワーがあり、
その無垢な熱を、全身で受け止めた。
「バイバイ」
なかなか離してくれない彼らだから、
半分逃げるように、宿の階段を駆け上った。
部屋の窓を開ける。
少し生ぬるい午後の風と一緒に
疲れを知らない笑い声が舞い込んできた。
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