青い丘に立つ―。
空は青く、薄い雲が幾重にも連なっている。
遠くに街が見え、まるで箱庭のようだった。
いよいよラストシーンか…
夢のような日々
マダガスカルで過ごした夢のような日々が
まもなく終わろうとしている。
もう、辛い移動は嫌なので、
タクシーを半日チャーターし(約1500円)、
「アンボヒマンガ」と、「チンバザザ動物園」を
訪れることにした。
首都アンタナナリボ(ようやく噛まずに言えるようになった)
からおよそ20km、
初めてマダガスカルを統一したメリナ王国の首都が
アンボヒマンガである。
マダガスカル語で「青い丘」を意味し、
王宮の残る王領地の丘は、世界遺産に登録されている。
タクシーを降り、短い石段の道を進む。
料金所が見えてきた。
そこには日の丸のプレートがあり、
「日本の援助で維持管理されています」的な文句が。
ひょっとして無料かも!?
「ジャパニーズ!」と指差しながら前を通過しようとするも、
「チケット、チケット」と、呼び止められる。
まぁ、当然だわな…。
つづいては、財布から「京都大学」と刻字された
国際学生証(ナイロビで作った本物!)を取り出し、
人さし指と中指でカッコよく挟んで
「スチューデント」と高らかに宣言した。
「ノーディスカウント」
苦笑いのスタッフ。
あ、そう。ダメ?
7000アリアリー(約400円)を支払い、
城壁に囲まれた敷地内へと足を踏み入れた。
アンボヒマンガ
おぉ~、世界遺産!!
と、唸ることはなく、
もれなく“?”が3つ以上付く
どうして???遺産だった…。
道の駅に隣接している資料館、
それを思い浮かべていただければOK。
館内は写真撮影禁止で、
暇そうなガードマンにマンツーマンでマークされた。
元を取らねば…、ではないが、
一応じっくり見て回る。
遺跡は好きだが、資料館や展示物はどうも苦手。
どうですか?と、
主催者側に意見を求められてる感が否めなくて…。
雑然とした、ほっとき具合が心地良いのになぁ。
丘を上り、建物(博物館)の裏手に出た。
20km先にある首都までも見渡せ、
これでこそ世界遺産に値する眺めだった。
岩に腰掛け、しばらく風に吹かれた。
もう、終わっちゃうんだな、マダガスカル…。
アフリカに位置しながら、
西洋の建物とアジア顔の人々。
不思議の世界に迷い込んだ、
そんな2週間だった―。
チンバザザ動物園
さて、“忘れ物”を取りに行きますか。
マダガスカルの顔とも言える、
「ワオキツネザル」や「アイアイ」をまだ目にしていない。
タクシーに戻り、動物園へと向かった。
本当なら自然公園で彼らを見たいところだが、
時間にもお金にも余裕がない。
ちょっと味気ないかも知れないが、手っ取り早く
動物園に行くのがよいのではないだろうかと、
アンタナナリボの郊外にある
「チンバザザ動物園」を選択した。
入場料は10000アリアリー(約600円)。
園内は動物園と植物園が一緒になっていて
思った以上に広かった。
フランス語表記のため、
どこにお目当ての動物がいるのかわからず、
闇雲に園内を歩く。
すると、特徴的なシマシマのしっぽが目に入った。
ワオキツネザル
い、いた! いたよ☆
ワオキツネザルは池に浮かぶ小島に飼育されていた。
ちょうどエサの時間だったらしく、
バナナやニンジンを夢中で食べていた。
ちょこまかと動きまわる姿は愛くるしく、
器用にしっぽを使って木々を飛び移る。
地べたにいるやつらは、しきりにしっぽを気にしている。
小さな身体の1.5倍は長さのあるシマシマ。
口で噛んだり、指先でつまんだりと、手入れに余念がない。
そんな姿を飽きずにずっと眺めていた。
森の悪魔に出会う
最後はアイアイ。
残念なことに彼らは夜行性。そういえば、
上野動物園でも寝床から出て来なかったっけ。
どれだけ目を凝らしても、彼らの姿は見えなかった。
仕方なく、看板の写真を撮って帰ろうとした。
そのとき!
背後から呼び止める声がした。
「ジャパニーズ?」
飼育員のようだ。
アイアイが見たいのか?
そう問うている。
彼に導かれ、暗室の中に入った。
暗くてよくわからないが、
ガラス張りの大きな檻がそこにはあった。
飼育員は目を凝らし、ガラスを小突き
アイアイを探している模様。
「あのぉ、ライト持ってますけど…」
リュックからヘッドライトを取り出し、彼に手渡した。
おー、そうかそうか、と
ライトを頼りに再びアイアイ探しが始まった。
のそのそと黒い物体が動いた。
で、デカイ…!?
熊のような毛並み、大きな耳としっぽ、
そして睨みつける視線…。
童謡にある、
あーいあい、あーいあい、おさるさんだよ~♪
なんて、かわいいサルを想像してはならない。
アイアイは「森の悪魔」と呼ばれているように、
怪しげで、獰猛そうな生き物だった…。
飼育員がチップを求めてきたので、
1000アリアリー(約60円)を手渡すと、
好きなだけどうぞ、と貸切にしてくれた。
ライトで照らしながら、カメラを構える。
誰もいないし暗室の中で、夢中になって
不気味なアイアイを撮影した。
きっと日本人くらいなんだろうな、
アイアイに幻想を抱き、
お金を払ってまで見たがるのは。
こうやって別料金小屋が用意されていて、
日本人と判ると、「こっちへおいで」と
暗室へと招待してくれる。
そう、飼育員の小遣い稼ぎとして。
哀、哀だね…。
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