星の王子さま

悪魔が大木を引き抜いて、
逆さまに突っ込んだといわれる“バオバブ”。

サン・テグジュペリの『星の王子さま』では、
星を破壊する巨木として描かれている。

 

バオバブ街道を目指して

ここムルンダヴァには、
バオバブを見るためにやって来た。
町からおよそ15km離れた場所に
「バオバブ街道」と呼ばれる場所がある。

タクシーをチャーターし、
半日かけてバオバブを見に行くことにした。
料金は25000アリアリー(約1500円)。
英語はできないが、
気の良さそうなドライバーだった。

バオバブ街道の夕日が見たいので、
出発は午後2時。
カメラ3台をガチャガチャいわせながら
車に乗り込んだ。

道が激しく痛んでいるため、
旧式のルノーはミシミシと呻きながら進む。
ノスタルジックな景色に
よく溶け込んでいたと思う。

なぜか途中で若い女性が乗り込んできた。
ドライバーの彼女か?
まぁいい、みんなで行こうじゃないの。

 

愛し合うバオバブ

 

凹凸のビートにあわせて
身体を左右に揺らしながらさ。
最初に訪れた場所は、
「愛し合うバオバブ」
うん、ロマンチックな名前じゃないか☆

名前の通り、バオバブは激しく愛し合っていた。
2本の幹が絡み合い、もうクネクネ。
でも、見ようによっちゃコブラツイストだね…。

ふと、振り返るとドライバーと彼女が
2ショットの写メールを撮っていた。
人のお金でデートかよ…たくっ。
でも、微笑ましい光景だっので
代わりにシャッターを押してあげた。

 

これぞマダガスカル!

ここでバオバブについて少し解説。
幹は徳利のような形をしていて、
高さは約20m、太さは10mに及ぶ巨木だが、
中はほとんど空洞だとか。
バオバブは幹に水分をたくわえており、
乾季になると葉を落とし休眠するため、
幹が巨大な貯水タンクの役割をするという。
これだけ巨大なのに葉が少ないのは、
樹皮下でも光合成ができるからである。

バオバブは世界に9種類あり、
そのうち8種類はここマダガスカルに生えていて
実に7種類が固有種だとか。

つづいて訪れた場所は「バオバブ街道」。
サラサラの砂道の脇に、ひと際目立つ巨木。
バオバブの並木道が伸びていた。
これぞマダガスカル!な光景。
星の王子さま、ってこんな感じなのかな…。

そういえば小学校の夏休み。
読書感想文で3度も
『星の王子さま』をフューチャーした。
そんなに好きだったのか?
いや、読書が嫌いで手を抜いただけ…。
正直、最後まで読んだ記憶がなく、
最初の方のあらすじを拾って行を埋め、
不思議だ、不思議だと、書き綴った。
おそらく3回とも同じことを書いたと思う…。

まさか、その世界を目の当たりにするとは。
どんな話だったか思い出せないのが残念だ…。
そんな読書嫌いで、国語が苦手な自分が
ライターという職業を選んぶのだから
世の中はわからない。
この景色と同じくらい不思議だ…(笑

 

童話の世界に迷い込んだ証

並木道はおよそ200mと短い。
2往復して、木陰に腰をおろした。
ここで夕日を待つのだ。

牛車がのろのろと通り過ぎる。
子どもたちが元気に駆けていく。
大きなトラックが砂煙を巻き上げた。
2時間、ぼんやりと道行く人たちを眺めた。

午後6時を過ぎると
空は茜色、幹もオレンジ色に染まった。
不思議な光景は、
幻想的な光景へと色を変えた。
長く伸びた影法師を踏みながら、
並木道をもう一度歩く。
このままどこか違う星につながってそうだ。

夕日に照らされ、
影絵のように切り取られた
バオバブのシルエット。
童話の世界に迷い込んだ証として
そっとカメラに収めた。

そして、日本に帰ったら
もう一度『星の王子さま』を
読み返してみようと思った。

 

旅のカケラ/slideshow

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