今日は移動日。
ヨルダンの「ペトラ」を経ち
エジプトの「ダハブ」を目指す。
アカバのフェリーターミナル
まずは午前7時15分発のアカバ行きの
ミニバスに乗り込み約2時間(約800円)、
アカバからはタクシーで
フェリーターミナルに乗りつけた。
1人だったため3ディナール(約460円)
と、ちょっと痛い出費…。
まぁ、ヨルダンのお金が余っていたし、
国境越えの日は多少の出費には目をつぶっている。
アカバからはエジプトの「ヌウェバ」行きの
国際フェリーに乗るわけだが、
このフェリーが悪名高い…。
なんと、ここ1年で料金は倍増の85ドル!
ペトラの入場料とこのフェリーの値上げは
とどまることを知らない。
死語だが、“イケイケ”状態なのだ(怒
しかもこれだけ高い運賃を払わせておきながら、
出航時刻を守らない。いや、守らないどころか
定刻という概念がない。
ある人は5時間待ち、ある人12時間待ち。
でも彼らは口を揃えてこう言ったさ。
「いやぁ、まだマシな方ですよ」
なんと3日待ちという大御所がいるのだから…。
持久戦に備える
フェリーに乗り込む前に
ヨルダンの出国手続きがあるため、
ターミナルからは出られないし、
かといってターミナルには売店が
かろうじて1軒あるだけ…。
みんな床に寝転がって、
いつ出るかわからないフェリーを待つ。
だから憂鬱な気持ちでフェリーターミナルに入った。
「8時間くらいなら…」と、覚悟を決め
この日のために本を3冊仕入れた。
バカ高いチケットを購入し、
一応就航時刻も聞いてみた。
「13時」
自信あり気な態度で返答をくれたが、
まったく期待はしていない。
勝手がわからないので
欧米人の近くを陣取って、持久戦に備えた。
本を読み始めて30分、人の波が動いた。
まさかこんな早く?
腕時計は午後12時30分を指していた。
バスでフェリーまで搬送され、
長い列に並んで船内に流れ込んだ。
エアコンが効いていて、シートも広い。
こりゃあ快適だ!
ここならあと8時間だって待てるさ。
旅の神様
ドドドド…エンジンが唸りを上げた。
まさか? いや、そのまさかだった。
低いノイズと振動が船内に響き、
重い腰を上げるように、
ゆっくりと船が海をすべっていく。
午後1時30分、出航。
まさかの30分遅れ、
これを奇跡と呼んでも過言じゃない。
5時間待ち、12時間待ち、3日待ち…。
名誉挽回とばかりに彼は動き出した。
思えば最近はラッキーの連続。
イスラエルの入国審査だって5時間待ちはザラなのに
たったの30分で通過。
高額なペトラ遺跡のチケットも
運よく半額で譲ってもらったし、
今朝だって、アカバ行きのバスを
偶然ホテルの前の道で捕まえた。
キテます?
この世にはいろんな神様がいて、
勝負の神様、笑いの神様、ロマンスの神様…。
きっと今は、“旅の神様”が降りてきたに違いない。
キテる、キテるよ。
2時間の航海、ここも紅海。
ポテトチップスをコーラで流し込みながら
『深夜特急』の5巻を読んだ。
旅情はMAX、いざゆかんアフリカの地へ―。
アフリカの玄関口
エジプトの「ヌウェバ」に着いた。
そこには、インドを彷彿とさせる喧騒が待っていた。
我先にと、順番は守らないし、
そこら中で大声を張り上げての
ケンカがはじまっている。
ギラついた目でつきまとう客引きたちも復活。
アフリカの玄関口であるエジプトは、
懐かしいアジアの顔をしていた。
そんな光景に神様も嫌気がさしたのだろう。
運気はどこかへ去っていった。
「ダハブ」行きのバスはタッチの差で出発してしまい、
乗り合いタクシーにも乗客は集まらなかった…。
「どうする、150ポンド(約3000円)
ならダハブまで連れてってやるけど?」
勝ち誇った顔の運転手たちに囲まれた。
冗談じゃない!バスなら300円、
10倍も払えますかっての!
エジプシャンは頑固だった。
インドなら帰るフリや頑なに拒否をしていれば
折れてくるものの、
彼らはガッチリとスクラムを組んで
値下げをしてこない。
こちらの言い値も、50、70、80と
徐々に釣り上げられていく…。
久々に勝負に出たね。
フェリーターミナルで8時間待つつもりだったから
その根気を今使ってやろうじゃないの!
ザックを下ろし、座り込みならぬ
“寝込み”を敢行した。
80ポンド(約1600円)じゃなきゃ
テコでも動かねぇ!!
30分くらいふて寝をしてたかな?
しかめっ面の運転手が折れてきた。
「80でいいよ、乗れ」
12人乗りのワンボックスカーをひとり占め。
砂漠の1本道を爽快に走りぬけた。
ダハブまでは約50km、
タクシーを貸切って1600円は安かったな(笑
「やっぱり100な」
「じゃあ、降りる」
「ジョーク、ジョークっ!?」
そんなやりとりを3回ほどするうちに
ダハブに着いた。
長く伸びた影
夕暮れのビーチに灯りがともり、
陽気な音楽と、波の音。
潮風がすぅっと抜けていった。
チルアウト。
アフリカの、エジプトのイメージが
音をたてて崩れだした。
ただ、賑やかな空間ほど淋しさは込み上げるもので、
ひとりな自分を痛感した。
長く伸びた自分の影を踏みながら、
アフリカの地を歩きはじめた。
第三章『アフリカ』編の幕開けは、
ちょっとセンチメンタルな風が吹いていた。
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