メキシコシティ、午前7時。
予定よりも1時間遅い到着。
最後のバス
最後の長距離バスは快適に眠った。
ガラス張りのバスターミナルにたっぷりと朝日が差し込み、
床が鏡のように反射して眩しい。
車中泊、寝起きでだるい身体…、
重たい荷物を担いで歩き出す。
新型インフルエンザはここメキシコで発生し、
今では世界中に飛び火した。
発生当初はここメキシコシティも厳戒態勢が敷かれていたが
今はすっかり落ち着きを取り戻したようだ。
1週間前に訪れたときよりもマスク姿は少ない。
日本やアメリカでは依然大騒ぎなのに
渦中のメキシコシティがこんなに長閑だと拍子抜けしてしまう…。
これもラテン気質のせいなのか?
しっかりとマスクをし、念には念をとタクシーを利用した。
メキシコシティ
メキシコシティはメトロ(地下鉄)が充実しているので
たいていの場所ならこれで行ける。
しかも料金はたったの2ペソ(約16円)で、何回乗り換えてもOK。
タクシーはチケット制で目的の宿までは85ペソ(約650円)もした。
高っ!
でも、メトロを使ってインフルエンザに感染したらシャレにならないし
こんな最後に危険を冒す必要もない。
「メキシコシティ」
人口900万人を有する中南米諸国の中心地。
アステカ帝国とスペイン植民地時代の旧跡を残しつつ、
現代文化と都市機能が息づいている。
特に歴史地区のソカロ周辺は重層なコロニアル建築が並び
中世のヨーロッパと見紛うほど、夢幻な世界が広がっている。
旅のフィナーレに相応しい街だと思った。
ソチミルコ
メキシコシティの歴史地区とソチミルコは
ユネスコの世界遺産に登録されている。
まずは「ソチミルコ」を訪ねてみることにした。
ソチミルコはうんと郊外にあるため
タクシーを使うには財布のダメージが大きい…。
街も平和そうだし、思い切ってメトロとバスで行くことにした。
マスクを装着し、うがい、手洗いをこまめにすれば大丈夫なはず。
メトロを2回乗り換え、さらにバスで40分、
ようやく目的の場所にたどり着いた。
かつてメキシコシティはその大半が湖だったが、
スペイン植民地時代に埋め立てられ、現在に至る。
その面影を残す大きな水路が縫っているのがソチミルコ。
手漕ぎの船で水路巡りができるというので楽しみに出かけたのだが、
そこはインドで目にした光景だった…。
「500ペソ(約4000円)」
はぁ!?
ガイドブックには20ペソ(約160円)って書いてあるのに…。
それもそのはず、
水路を埋め尽くす勢いでボートが浮かんでいるのに客はゼロ…。
漕ぎ手もすっかりやる気をなくし、木陰で昼寝。
たま~にノコノコやってくる外国人を捕まえては
法外な金額を言い放ってくる始末…。
「じゃあいい!(怒)」
今日も街を歩く
イライラしながら立ち去った。
乗り場は1つじゃないので違う場所をあたってみよう。
しかし結果はどこも同じ…。
交渉には応じてくれるようで最安値180ペソ(約1500円)
までは下がったが、それでも高い。
井の頭公園のボートだってもっと安いよ。
きっと乗り合いのボートに乗れれば20ペソだったのだろう。
タイミング悪く新型インフルエンザが蔓延し、
すっかり悪名高き国になってしまったメキシコ。
観光客は激減してしまった、
日本のニュースとは丸っきり違って街は平和そのものなんだけどね。
空振りに終わったソチミルコ。
再び歴史風致地区のソカロに戻り、街歩きをすることにした。
「メトロポリタン・カテドラル」
メキシコにあるすべての教会を統轄する大教会で、
1681年、100年以上の歳月をかけて完成した。
内部はバロック様式の重厚な装飾が施され、
高い天井を見上げれば溜息がこぼれる。
魂が洗われるような、天使に祝福されているような…。
よく、ここまで来たね
そんな声が聞こえてきそう。
思い出に変わっていく
5000円と吹っかけてくる世界遺産もあれば、
無料でこんなにも見ごたえのある世界遺産もある。
この旅で50を越える世界遺産を訪れたことになる。
心のNO.1はどこだろう?
マチュピチュ? ぺトラ? イースター島?
ふいに太鼓の音が響いた。
カテドラルのすぐ前で
コンチュロスのパフォーマンスが始まったようだ。
ここはもともとアステカ神殿で最高神のひとつ、
ケツァルコアトルの神殿があった場所だから
こうして先住民文化を今に受け継いでいる。
よくよく観察していると、
カテドラル周辺で露天を出している人たちが
何かの合図で民族衣装に着替え、踊り出していた。
激しく踊ったあと、さっと自分の店に戻り
涼しい顔でアクセサリーや民芸品を売っているのは面白かった。
アステカ帝国の中央神殿跡「テンプロ・マヨール」
メキシコ独立の舞台となった「国立宮殿」
街は宝石箱。いつまでも見飽きない美しさ。
夜はさらにその輝きを増していた。
再びカテドラルの前を通りかかると…
まだ踊ってるよ、この人たち!?
インフルエンザはどこへやら…(笑
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