起死回生!?モアイの島へ

 

腕時計、午前8時、叫び出したくなる焦燥感…。
「どうして?」
100ぺん繰り返しても足りないし、
窒息するくらいため息がこぼれた…。
「間に合わない…」

 

焦燥感

暗い機内の中で、おそらく自分ひとりが
こんなにも取り乱していただろう。
午前6時20分にブエノスアイレスを飛び立った飛行機は、
午前7時35分のサンティアゴ到着時刻を過ぎても
まだ優雅に水平飛行をつづけている。

窓の外を睨む、時計を睨む、客室添乗員を睨む…
ちょっと、まだ着かないの??
こんなにも急いでいるのには訳がある。
チリの「イースター島」に向かっているのだが、
まずはブエノスアイレス(アルゼンチン)から
チリのサンティアゴへ飛び、
そこから国内線に乗り換えてイースター島へと渡る。

しかし、手にしているチケットを見ると、
サンティアゴ着が7時35分で、
次のフライトが9時10分と記載されている。
サンティアゴの空港では、
入国審査、荷物の受け取り、荷物検査、チェックインと
やらなければならないことが目白押し。
ファイナルコールが8時30分だから
正味1時間を切っているわけ…。

なのに、なのにだよ!
時計の針はすでに8時、絶対間に合わないじゃん(泣)
このイースター島行きのチケットは999ドルと、
メチャ高チケットで、しかもここ数日はすべて満席。
もし、今日のフライトで乗り継ぎに失敗したら
次はいつのフライトに振り替えられるのかわからないし、
帰りの便もすでに押さえてあるので
5日しかない滞在日数を削ることになる…。

神様、仏様、モアイ様!
お願いだから意地悪しないでぇー。

 

走れ、トランジット

ズシンと機体を揺らし、滑走路に降り立った。
時刻は8時20分、
あと10分で乗り継ぐなんて絶対無理だよ…!
うな垂れながらも、先頭で降りる準備をし
『世界の中心で愛を叫ぶ』と同じように
大声で「誰か、誰か助けてください!」と、
空港で叫ぼうを身構えていた。

扉が開いた。ダッシュだ!!!
イミグレーションに向かって走る、走る。
ぶっちぎりのトップで入国審査を終え、
つづいて荷物を受け取るターンテーブルに走った。
ふと空港職員の姿が目に飛び込んできたので、
急いで駆け寄り、
握り締めていたチケットを見せて
「時間がないんです、助けてください!」
とすがりついた。

彼はチケットを一瞥すると
さも涼しげな顔でこう言い放った。
「大丈夫、十分間に合うよ」

あへ?
笑顔で腕時計を指し示す、
彼のセイコーは午前7時40分を指していた。
じ、時差だ☆
これは嬉しい誤算!
ブエノスアイレスは現在サマータイム中なので
チリに入り、-1時間となった。
安堵の表情で時計の針を戻した。

 

チリに入国

あ、そうそう、忘れないうちに。
46ヶ国目「チリ」です!!(ジャジャーン♪)
荷物チェックをパスし、搭乗手続きをし、
搭乗口に向かった。
ファイナルコールの15分前、
良かった、間に合ったよ。
ほんの1時間前は死にそうな顔をしてたのに
今は嬉々とした表情で、イースターに思いを馳せている。
一喜一憂、人って不思議。

イースター島は遠い。
国内線にも関わらず5時間半のフライトで、
サンティアゴからは約3700km離れているし、
隣のタヒチまでも約4000km離れている。
そこは絶海の孤島、モアイの島。

 

夢のイースター島

午後12時40分、
機体を揺らしながら、不思議の島に着陸した。
拍手したい気分、着いた、着いたよ♪

タラップを降りながら何枚もシャッターを切った。
生ぬるい風と照りつける太陽、
紺碧の空を仰ぎ見た。

「イースター島かぁ…」

興奮がピークに達した後は、
体の空気が膨張したようなフワフワ気分。
夢じゃないよね!?
わかっていても確かめたくなる。
それくらい気分はハイだ。

イースター島の第一印象は、
北海道と沖縄をミキサーにかけたような感じで、
牧歌的な景色の中に、
ハイビスカスやブーゲンビリアが咲き乱れていた。

島を歩く、
つま先から伝わってくる島時間。
息を吸う、
鼻こうをくすぐる夏の香り。
目を閉じる、
島の声が大きく広がった。
そして、目を開ける。
いるね、ここに。いるよ、イースターに。

モアイ、モアイ、モアイ…
モアイ、モアイ、モアイ…
モアイ、モアイ、モアイ…
もっと、もっと、モアー、モアイ☆

テレビで中で観た景色、本の中で憧れた場所、
いる、いる、いる!!
モアイを背に沈んでいく夕日に
言葉を失った…。
もともと、スゴイ!以外に発する言葉はなかったが
その言葉すら奪っていくワンシーン。

オレンジに染まる空と海、
そしてモアイのシルエットを
押し黙ったまま見つめていた。

 

旅のカケラ/slideshow

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