STARTING OVER ~後編~

ケープ半島の南端「喜望峰」。
やがて道路は果て、
そこからは旧灯台を目指して歩くことになる。

 

たどり着いた喜望峰

インド洋と大西洋の2つの海流がぶつかる岬は、
15~16世紀のポルトガル国王マヌエル1世が、
ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路発見を記念し、
ポルトガルに希望を与えるという意味で
「喜望峰」と命名したそうだ。

喜望峰は自然保護区になっていて、
ゴールとなりうるポイントがいくつかある。
主に終着点として人気があるのが
「ルック・アウト・ポイント」と呼ばれる旧灯台と、
「ケープ・オブ・グッド・ホープ」と呼ばれる場所。
旧灯台(展望台)からは
ケープポイント(ケープ半島の最南端)が見渡せるので、
高みを目指す!という意味を込めて、
「ルック・アウト・ポイント」をゴールに見据えた。

 

最後の1段

灯台に近づくにつれ、風は激しさを増し
何度も吹き飛ばされそうになりかながら1歩1歩踏みしめた。
トレイルからの景色は、今までのどの景色よりも素晴らしかった。
感慨がひと潮だからだろうか?
口には出さなかったが、心の中でさまざまな感情が溢れ、
風の轟音がかえって静寂に包まれているようだった。

最後の1段を、せーの!で踏みしめ、
「やったぁ、ゴール!」と両手を空に突き上げた。

ハァ、ハァと息が切れる。
でも、これは疲れではなく、押しとどめれない感情の声だった。

喜望峰、喜望峰、キボウホウ…

何かが終わり、何かがまた始まろうとしている。
1つおわりと、1つのはじまり、
アフリカの大地はここで果てたが、
その先にはその名の通り
キボウがつづいている。

「お疲れさん、終わったね」
日本から一緒に旅してきた相方ヒロと握手を交わした。
『平成ころんぶす』というTV企画をふたりでやってきたが、
ここでエンディングを迎えた。
そして明日からは、ふたり別々の旅路をたどる。

 

パンドラの箱に入っていたもの

パンドラの箱には希望が入っていた。
喜望峰の先にもやっぱりキボウが伸びている。

その昔、「人生の目的は何か?」という大儀を携えて、
お遍路に出かけたことがある。
88の寺を巡礼することで、その答えが見つかる気がしていた。
最後の寺にたどり着き、そこで見つけた答えはこうだった。

「人生に目的はなく、あるのは目標だ」

 

1、2、3…、自分と対話しながら次の寺を目指す。
44、45、46…、終わりがあるのか?と自問した。
もちろん、人生の目的ってヤツも見つからない…。
やがて寺の数が70を越えた頃、心境に変化が現れはじめた。
88に近づくにつれ、終わってしまう淋しさが込み上げてきた。

“目的”が見つからないまま、
このお遍路を終えてしまう焦りではなく、
心にすぅ~っと風が抜けるような心地よさ、
その時間、その旅が終わるのが惜しい。
そして、88番目の寺に着いたとき、
あぁ、もう1周したいな…と思った。
そう、目的が目標に変わったのだ。

目標は1つ叶えても、また次の目標が姿を現す。
お遍路も、1つの寺を終えても、また次の寺を目指す。
88全部を終えたって、「もう1周したい」という目標が現れた。
目標は終わらない!
だから、人は旅をするし、生きていく。

 

キボウの先へ―

本当は帰りにケープタウンの象徴である
「テーブルマウンテン」に登る予定でいた。
しかし、喜望峰で時間を使い切ってしまったため
間に合わなかった…。
まぁ、いいさ。未練を残しておいたほうが、
次に訪れるきっかけになる。

旅の第三章「アフリカ編」は、喜望峰で幕を閉じる。
でも、STARTING OVER
この旅はまだ終わらない。

カッコつけて言うならば
キボウの先へ―。
この旅の終着駅へ向けて、
ここからはひとり旅だ。

 

旅のカケラ/slideshow

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