日が沈むナイル西岸は、
生命の衰退を意味する
「死者の都」と考えられていた。
雄大な青ナイル
ルクソール2日目、
フェリーでナイル川を渡り、
今日も自転車で風になる。
対岸へはフェリーで約10分、
2ポンド(約40円)で
自転車もろとも運んでくれる。
雄大な青ナイルは何度見てもいいものだ。
近くのグランドを横切った際、
サッカーをしている子どもたちを目にした。
「混ざっていいかい?」
自転車を止め、輪に加わることにした。
観光前の準備運動、そう思っていたが
やっぱり熱くなってしまい、
気がつけば1時間もボールを追いかけていた。
最近はサンダルで行動しているため、
コンクリートのグランドにも関わらず裸足になり、
足の皮が擦り切れるまで夢中になった。
ヒリヒリ、足が痛い…。
死者の都
親指立ちでペダルを漕ぎ、
顔をしかめながら、坂を上った。
西岸地区は見所が多く、
遺跡が点在しているため
1日がかりの観光になる。
昨晩、念入りにガイドブックを読み、
行きたいスポットを捻出した。
王家の谷、ラメセウム、
ハトシェプス女王葬祭殿は、はずせないな。
王家の墓への道のりは、果てしなく遠かった。
6.6kmの上り坂…。
ミシミシとペダルを軋ませ、
体重をペダル一点に集めて、
左右によろめきながら前を目指した。
そして1時間後、谷の入口が見えてきた。
王家の谷
王家の谷は、新王国時代に造られた岩窟墓で、
地表から階段を下りると玄室へと誘われる。
ここには60を越える墓があり、
チケットを購入すれば好きな墓を
3つ見学することができる。
本当は「ツタンカーメン王の墓」が見たかったが、
ここは特別。新たに40ポンド(約800円)の
チケットを購入しなければならなかった。
懐具合が明るくないので、
玄室の線描画が美しいトトメス3世と、
壁画の保存状態が良いラメセス1世
を見学して我慢することに。
切り立った岩山に囲まれた王家の谷、
長い上り坂と、照りつける太陽、乾いた大地…
ホント、ミイラになりそうなくらい身体の水分を失った。
乾いてなんていられない!
すっかり日が高くなり、
じりじりと時間がなくなってきた。
エジプトの女王
ここで相方ヒロは、自転車のパンクにより
無念の帰宅…。
新相棒の“山さん”とふたりで次なる遺跡を目指した。
ハトシェプス女王葬祭殿
ファラオ史上唯一、エジプトを統治した女王である
ハトシェプスト女王によって建造された神殿。
遠くにこのシルエットが見えたとき、
あぁ、着いた…と、安堵の溜息をこぼした。
観光は1日4時間がベストである、
これ自論。
身体が疲れ切ってしまうと、集中力が散漫になり、
何を観たって感動が希薄になるもの。
挙句には、目的地に着くことが自体が
“目的”になってしまう…。
こんなときほど、シャッターを無駄に切り、
パッとしない写真を後から見て
ガックリと肩を落とす。
西日に照らされる像
だから次で最後にしよう。
「ラメセウム」へ向けてペダルを漕いだ。
ラメセウム
ここはラメセス2世の葬祭殿で、
荘厳なレリーフと、オシリス柱が見事だった。
入口に聳える4体のラメセス2世像は、
まるでラピュタの巨神兵。
乾いた身体と心に、ふつふつと気力の泡が甦った。
西日に照らされる像を眺めながら、
その場にへたり込み、
あー、スゲー、と天を仰いだ。
よろめきながら坂を下り、
フェリーでは、サドルに寄りかかったまま
眠りこけてしまった。
クスクス、
ふたり組みの青年が笑っていた。
はぁい…、
力なく手を振り、再び眠りに落ちた。
観光はスポーツだ!
そう強く実感した1日だった。
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