朝起きると軽い頭痛が…。
ここは標高3500mの街、香格里拉(シャングリラ)。
高山病の前兆というやつか?
とにかく水分を取って、適度に身体を動かす、
これが対処法だ。
小ポタラ宮=松賛林寺
何度見ても、空の青さにはため息が出る。
青じゃなく“紺碧”と呼ぼうか。
バスに揺られること30分。
“小ポタラ宮”と呼ばれるチベット寺院「松賛林寺」に降り立った。
はぁぁ、こりゃチベットだよ!
ラサだよ、ポタラだよ!!
この旅の楽しみの半分はチベットだった。
今じゃ近くて遠い憧れの地…。
でも、目の前に広がる景色はチベットそのものだ。
思わず早足になる自分に、「高山病、高山病」と戒めながら
迷路のような寺へと足を踏み入れた。
ダライ・ラマ5世が創建
ここはチベット仏教のゲルグ派の寺院で、
1679年にダライ・ラマ5世が創建。
雲南省最大のチベット仏教寺院と言われ、
雲南のポタラ宮とも呼ばれる。
ちなみに中国語では「帰化寺」と言うらしい。
現在700名余りの僧がこの中で修行しているのだとか。
寺は丘の斜面に位置し、
いくつもの寺が集まっていて、まるで要塞のよう。
頂上にある「吉康」「扎倉」の2つの大主寺は
5層式の大きなチベット式建築物である。
本堂はもちろん、門や入口が開いている寺なら
どこへ入っても構わないそうだ。
はためくタルチョ
身体はどんどん軽くなった。
いや、心が軽くなったというべきか。
同じ場所を何度も行き来しながら、
チベットの風に吹かれた。
ふと、遥か山頂を見上げると
無数のタルチョ※がはためいている。
(※経文が書かれた布で、聖なる場所に掲げられる祈りの旗。
5つの色があり、物質の5元素である地水火風空を意味する。)
風に、タルチョに誘われるように
その丘を目指した。
5色の旗を見据えながら、道なき道をゆく。
風の音が大きくなった。
バサバサと、タルチョが鳴いている。
はぁ、はぁと肩で息をしながら
目の前の景色にしばし立ち尽くしていた。
呼ばれていたんだ
達成感か、疲労感か?
身体の力が抜ける、放心状態だ…。
「生きててよかった」
なぜか、この気持ちが真っ先に浮かんだ。
ここは聖なる場所。
チベット仏教では、神聖なものがあったら
そのまわりを時計回りにまわるのが基本。
それを「コルラ」という。
なぜチベットに憧れ、ラサへ行きたがっていたのか、
その意味がわかった。
「呼ばれていたんだ」と。
信じるチカラ
ちょっとオカルト的に聞こえるかも知れないが、
そんな不思議な力が世の中には存在すると思う。
“信じる”力は強大で、
ここには彼らの魂が息づいている。
“疑う”ことからはじめるよりも、
“信じる”ことからはじめる人生のほうが
どれだけ豊なことだろう。
きっとその力に、コルラのうねりに呼ばれたんだ。
理想郷と呼ばれるシャングリラで、
ひとつの夢が現実のものとなった。
この空と風は、この先も忘れないだろう。
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