旅立ちの唄

午前5時、ダハブの朝焼けを見た。
赤絵の具を走らせたように
空と海が滲む。

眠たい目を擦りながら
旅立ちの朝を迎えた。

 

学生気分

 

『セブン・へブン』には多くの日本人が
宿泊していて、夜な夜な食堂では
宴会のような、座談会のような、
交流が繰り広げられる。
ときおり「ここはエジプト?」と
疑いたくなる光景だ(笑

20時に開幕した宴。
食事を買出しに行き、ビールを飲みながら、
おしゃべりやトランプに興じる。
いわゆるバカ騒ぎというやつだ。

時計の針は刻々と進み、気がつけば午前3時…。
「ラーメン食べたくない?」
誰かが言う。
いいねぇ♪
決を採ると10玉の票が集まった。
大釜でインスタント麺を茹で、
玉ねぎ、じゃがいも、玉子を投入。
そいつをみんなでつついた。

ここはエジプトのダハブだよ、
午前3時にラーメンまつり、って(笑

旅人はみな青春真っ只中。
端から見れば浮世離れした
社会の落伍者に見えるかもしれないが、
とても純粋で、夢を追いかけている。
日本にいるとき以上に、
日本の将来を考えているし、
自分たちの意見がある。
そして、日本に帰った後のプランも
日々悩みながら固めているのだ。

ここダハブで再会したカズマとも
今夜が最後の夜。
この後のルートは、南米までクロスすることはない。
チリかな?ペルーかな?ボリビアかな?
まるで近所で待ち合わせをするように
軽い言葉で再会を誓った。

また会えるかな?
結局彼とは朝の5時まで話し込み、
日本に帰ってからのプランを確認した。
ウォッカが回ったのか、
同じ話を何度も繰り返しながら
彼は夢の中に旅立っていった。

 

誰もいない海

バスの出発が近いため、今さら眠ることもできず
ひとりでビーチへ出かけた。
誰もいない海。
徹夜明けには眩しすぎる朝日を眺めながら
ダハブに、友に、別れを告げた。

ザックを担ぎ、バス停に向かおうとすると
カズマがひょっこり現れた。
「見送るよ」、そう言いながら
寝癖まじりの髪で。
寝てればいいのに…(笑

握手を交わし、少し照れながら手を振った。
途中2度振り返ると、
彼はまだその場でじっと見送ってくれていた。
フフフ、なんだか笑みがこぼれた。
こんな清々しい別れもあるんだな、と。

 

ドラマが日々繰り広げられる

バスに乗り、カイロへ。
カイロまではおよそ8時間(85ポンド ※1700円)、
景色を見ようと日中のバスを選択したのに、
到着までほとんど眠ってしまった。
ただ、夢うつつの状態で「スエズ運河」を見た。
眩しさに目を細めながら、デジカメでパシャリ。
水面がキラキラと輝いていてキレイだった。

あれは夢?
そうも思ったが、カメラには少しピンボケした
写真がしっかりと収められていた。

別れの後は出会いがあるもの。
カイロにある『スルタン・ホテル』で
いくつもの再会が待っていた。


キプロスで別れた相方のヒロ、
1ヶ月ぶりの合流だ。
イスラエルで別れたトモヤは、
ちょうど出発間際で、一瞬だけだが再会できた。
同じくイスラエルで別れたアユタも
同じビルのホテルに泊まっていた。

さらに深夜12時、
ヨルダンで別れたタクが追いついた。
「また会えたね」
そんな出会いと別れの繰り返し。
広くて狭い世界では、
こんなドラマが日々繰り広げられる。

日本に帰った友からもメールが届いていたし、
僕らはつながっている。
旅立ちはいつも淋しいけど、
それはステキな別れ。
出会いの未来への一歩であり、
つながりを確認するための距離なのだから。

旅のカケラ/slideshow

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