インドに入ってちょうど1ヶ月。
「インドでは、必ず謎の体調不良になる」
そう聞いていたとおり、激しい衰弱に見舞われている。
難聴、めまい、吐き気…。
荒い呼吸の中で、ただただ天井のファンを見つめていた。
日本食レストラン
幸いなことに先に進む気力は残っている。
今日もバスと夜行列車のチケットを手配済みだ。
ヴァラナシへの長い移動に備えて、
無理してでも何かを口に入れようと這うように部屋を出た。
味も見た目も「えっ…!?」と言わざるを得ない
日本食レストラン『シバジャンタ』へ向かい、
野菜炒めを注文した。
もうインド料理にはうんざりで、想像しただけでも気分が滅入る。
とにかくマサラから逃げようと、
最近はなんちゃって日本食で凌いでいる。
海外で体調不良になると、
食べるものがとにかく困ることを思い知らされた…。
食べるとはなんて体力を使う作業なのだろう。
全身から汗を噴出しながらも、気力を振り絞って咀嚼した。
食べ終わると、再びベッドに倒れこみ、
出発まで目を閉じて心を落ち着かせた。
病人がもうひとり
さぁ、出発の時刻だ。
相方ヒロの部屋をノックするが返事がない。
立っているのもしんどい状況だったので、
床にへたり込みながら、ノックの調子を強めた。
すると、目は虚ろ、真っ白な顔の彼が扉の向こうに現れた。
ど、どうした…?
真っ青な表情の自分と、真っ白に気が抜けた彼、
ここに死人がふたり顔を合わせている。
事情を聞いてみると、
なんとも呆れるというか、大丈夫かよ?と思わせる内容だった。
なんでも、インド人に「ヨガ道場に行こう」と奨められ、
怪しげな祠に連れて行かれたそうだ。
そこでハシシの回し飲みが行われ、彼はひどく酩酊した。
そして怪しげなサドゥに「ご利益のあるマントラだ」と、
陳腐なネックレスをつかまされ、
400ルピー(約1100円)を支払ったという…。
「どうも騙されたみたい…」
と、虚ろな目で笑う彼。
最小限の被害で済んだから良かったものの、
彼の伝説づくりには、いつもながら肝を冷やされる。
過酷な移動
死人ふたりの移動が始まった。
カジュラーホからマホバまでバスで4時間。
マホバ駅で列車を4時間待った後、
午前0時発の寝台列車に乗ってヴァラナシを目指した。
狭い寝台ベッドで身体を丸くし、
朝と、身体の回復を待った。
生と死を見つめる母なる河「ガンガー」。
世界の底にある街で、
やすらぎは得られるのだろうか…。
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