プエルト・イグアスで迎えた朝。
あぁ~あ、今日も曇り空…
南米の旅はすっきりしない天気に悩まされている。
昨日、アルゼンチン側の「イグアスの滝」を見たので
今日はブラジル側から見学する予定だった。
荷物をレセプションに預け、バス停に向かう。
空と同じくすっきりしない気分だ。
誰のせいでもないのに、何かに八つ当たりしたい感じ。
これまでの旅は、晴れて当たり前だと思っていた分、
ここ最近の雨率に気持ちが滅入るよ。
今の流れが悪いのか、単に雨季のせいなのか…?
ノービザでブラジルへ
ブラジル国旗が貼ってあるバスに乗り込む。
運賃は3ペソ(約90円)。国境はすぐそこだ。
アルゼンチン側で出国スタンプを押してもらい、
橋を渡った。
44ヶ国目「ブラジル」が見えてきた。
ブラジルはビザが必要な国だが、
アルゼンチンから日帰りでイグアスの滝に行く分には
ノービザでOK。(と言われている)
運が悪いと抜き打ちチェックに遭うらしいが、
まず大丈夫だろう。
国境でバスを乗り換え、「フォス・ド・イグアス」に向かった。
バスに揺られながら、気持ちも大きく揺らいでいた。
この曇り空で滝を見に行っても、
空を怨んでばかりで楽しくない!
それならいっそ、このデルタ地帯を冒険しないか!?
イグアスの滝を中心に、
アルゼンチンの「プエルト・イグアス」
ブラジルの「フォス・ド・イグアス」
パラグアイの「シウダ・デル・エステ」
の町が三角形を描いている。
今日の夕方にプエルト・イグアス→ブエノスアイレス
のバスを予約してあるので、
それまでにに三角跳びで町並み拝見!というのはいかがだろう?
国をまたぐスタンプラリー、
ビザも要らないし、こういうゲームは大好きだ。
フォス・ド・イグアス
おっ、空よりも先に気分が晴れてきたぞ。
フォス・ド・イグアス(ブラジル)は、
「ありがとう」がグラシアスから“オブリガード”
に変わったくらいで、人や町並みに違いは見つけられなかった。
それでも新しい国に入ったことは嬉しい。
公衆電話や信号、道行くバスにカメラを向けながら町を散策した。
郵便局に行き、ブラジルの切手を購入。
せっかく訪れたのだからと、記念に絵ハガキも送っておいた。
滞在時間はたったの2時間、
ほんの少しだけブラジルを齧って次のバスに乗った。
行き先はシウダ・デル・エステ、
乗車時間はたったの15分だった。
(運賃6ペソ ※約180円)
ついでにパラグアイ
ブラジル側の国境をそ知らぬ顔でスルーし、
45ヶ国目「パラグアイ」に足を踏み入れた。
ブラジルのスタンプがないから少しドキドキしたが
簡単に入国を許可してくれた。
言葉の通じない南米でとんだハシゴゲームw
国境を抜けると、町はアジアやアフリカの顔をしていた。
熱帯の湿った空気が肌にまとわりつき、
人、人、人の喧騒に包まれた。
通り一帯が闇マーケットで、衣類や電化製品が山積みされている。
ブラジルやアルゼンチンよりもはるかに物価が安いため
国境を越える買い物客が多いと言う。
何しに来たんだろう?
通りを歩いていると、治安が悪そうな雰囲気が伝わってきたので、
カメラを握る手に力を込め、周囲を警戒しながら足早に進んだ。
この町には世界最大のダム「イタイプー・ダム」があるが、
時間もパラグアイのお金もないので見学を諦めた。
じゃあ何しに来たのか?
うーんそいつは命題だが、ホントに足跡をつけたかっただけ(笑
パスポートにパラグアイの入国スタンプを押して、
郵便局から絵ハガキを送れれば立派な足跡だもの。
ところが!?これが誤算だらけだった。
アルゼンチンやブラジルと違って、
まったく英語が通じない上、
片言ながらもしゃべっていたスペイン語も
ここじゃほとんど聞き取ってもらえなかった…。
地図もないので郵便局に行くのに2時間以上も彷徨い、
現在地も完全にわからなくなってしまった。
絵ハガキを投函し、腕時計を見るとすでに15時を指していた。
アルゼンチン行きバスで1時間かかるため、
計算上では間に合うわけだが、バスターミナルはどこ?
「キエロ イール ア テルミナル デ アウトブセス」
(バスターミナルに行きたい!)
と、呪文を連呼するも首を傾げる人々…
たまに明日か明後日の方向を指さすが、
距離がわからないし、もう時間が…(誤算1)
連鎖する誤算
ならばとタクシーを拾い行き先を告げる。
パラグアイのお金もブラジルのお金もないので
アルゼンチンペソを見せた。
少し困った顔をする運転手。
アルゼンチンペソのレートを知らないのか
「100ペソ(約3000円)」
と、とんでもない額が口をついた…(誤算2)
じゃ、じゃあUSドルは?
マネーベルトからドルを出すが
運悪く高額紙幣しか手持ちがなかった。
50ドル紙幣を指差す運転手…
お釣り出ないだろうなぁ(誤算3)
どんどん時間がなくなっていく!
17時発の長距離バスに乗り遅れたら
その後の予定がすべて崩れる…。
1000ドルも出して取った「イースター島」の航空券が
パーになるんだから目も当てられない!!
急げ、今は金じゃなく時間だろ!?
「じゃあ、ブラジルまで行ってよ!
ブラジルのバスターミナル!!」
料金も60ペソ(約1800円)で手を打ってもらい
目指すはブラジルだ!
早く、早く!!
運転手を急かしながら何度も腕時計を見ていた。
容赦なく時間は過ぎていく…。
焦れば焦るほど、砂時計は早く落ちていくように感じられた。
呼吸も乱れる、頭もボーっとしてきた。
あれ、こんなにもピンチに弱かったっけ???
そうこうしているうつに国境をスルーし、
黄色と緑のブラジル国旗が見えてきた。
スリルの国境越え
え、スルー!?
ちょっと待った!
パラグアイの出国スタンプもらってないよ!!
戻って、戻って!!!
無情にも言葉は通じなかった…。
降ろされたのはブラジルのイミグレーション。
パラグアイの出国スタンプはないわ、
ブラジルのビザはないわで慌てふためいた…。
係員に見つからないようにタクシーに戻り、
もう知らんわ!と、すべて吹っ切って
「バモス!(出発して)」
と、叫んだ。
パラグアイの出国スタンプなし、
ブラジルのビザも入国スタンプもなし…。
突っ込みどころ満載の状態で
タクシーはブラジルを突き進んでいく(誤算4)
誤算は尽きない。
タクシーが向かった先は町の郊外にある
国際バスのターミナルだった…。(誤算5)
ここじゃないんだよ!
もちろん言葉は通じない(泣)
一応、プエルト・イグアス(アルゼンチン)行きのバスはあるかと
窓口で聞いてみたが、
近距離過ぎて答えは「ノー!」。
南米の神様
リミットは1時間…。
タクシーを乗り換えることにした。
運転手に落ち度はないが、
この人では言葉の壁もお金も高すぎる…。
バスをあきらめ、
ブラジルのタクシーで一気に行ってしまおう。
捕まえたタクシーはありがたいことに
メータータクシーだった。(誤算打ち止め)
お金はもういくらでもいい。
ただ、最後にして最大の関門が残っている。
パスポートをめくる、
欠けている3つのスタンプ…
パラグアイの出国と、
ブラジルの出入国スタンプ。
最期の審判?
お笑い芸人でなくても
突っ込みを入れたくなるパスポートを係員に提示し、
一緒にありったけの笑顔も提示した。
もし、「戻ってやり直し!」と言われれば
それはすなわち死を意味する…。
届け、届け!南米の神様、お願い!!!!!
ポンと、力強くスタンプが押された。
汝の入国を許可する!
そんな声が聞こえた気がした。
ははぁ、有難き幸せ~。
小躍りしたくなる気分だったし、
心で何度もガッツポーツした。
“走るホテル”と呼びたい長距離バスは
疲れた身体と磨り減った神経をがっちり癒してくれた。
ブエノスアイレスまで約20時間、
普段なら泣きたくなるほど遠い時間だが、
飛行機のファーストクラスと同じくらい快適なバスなので
時間や距離という概念を取り払ってくれる。
しかし、ずいぶんと綱渡りなスタンプラリーをしたものだ。
苦笑いを浮かべながら、車窓に視線を投げた。
もう2度とこんなことはしま…すん(どっち!)
旅のカケラ/slideshow
■ブラジル
■パラグアイ
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