まさかのアンコール!? ~パタゴニア最終日~

「また来たいな、パタゴニア」
空港へ向かうタクシーの車窓から美しい山々を眺めていた。

憧れがカタチになり、
あっと言う間に過ぎ去ってしまった7日間…
楽しい時間ほど、
手のひらからこぼれ落ちていく時の砂は早い。

 

静かな、別れの朝

昨夜は深夜4時過ぎまで起きていて
去り行く友を見送った。
最果てで交わしたハローグッバイ。
素敵な別れは日本に向けて放射線を描く。
ポカンと空いた心の隙間を埋めるように
トゥルーチャを撫でながら
「行っちゃったね…」と呟いた。

短い夜を越え、眩しい朝日が降り注いだ。
旅立ちの朝。
散歩がてら町に降り、
改めて最果ての情景を心に焼き付けた。
静かな朝。優しい日差し。人いきれ。
郵便局で絵葉書を投函し、これでパタゴニア終了!

「また遊びに来てね」
アヤコおばあちゃんの笑顔は癒される。
もちろん!と頷き、宿に別れを告げた。
大きく息を吸い込み、
人指しゆびを空に向ける。
これはバスを停める合図。
町までバスで下り、町中でタクシーを拾った。
遠ざかる町並み、これですべてが終わったはずだった…。

 

 

最後に待っていた落とし穴

「え、嘘でしょ…」
空港のチェックインで事件が起こった。
ブエノスアイレスへ戻る飛行機がキャンセルになっていた。
何度も予約番号と名前を調べてもらったが、
搭乗者名簿に記載されていない。
どうやらチケットを購入した代理店から
キャンセルの旨が伝えられたようで、
手元のEチケットはもはや紙くず…。
パニックに陥った。

とりあえず席に空きはあるというので
チケットを買い直そうと思ったが、
値段を聞いてビックリ!
予約していたチケットの3倍、6万円だという…。
これはさすがに払えないので、
宿に電話し、どうしたものかと相談した。
宿の管理人が代理店に電話を入れてくれた。

すると事情が飲み込めた。
どうやらクレジットカードが限度額に達していたため
後になって支払いが滞り、止む無くキャンセルしたと言う。
だったらもっと早く教えてくれればよかったのに…。

スキミングによりシティバンクの口座が空っぽになったため、
最近はクレジットカードを多用していた。
それがこんな事態を招くとは…。

 

最果ての悪あがき

こうなれば残る選択肢は2つ。
町に戻って安い航空券を探すか、バスで3日かけて帰るか。
降りたはずの幕が再び上がり、
パタゴニアのアンコールがはじまった。

まずはアルゼンチン航空のオフィスに行き、料金を聞こう。
あいにくごった返していて20人待ちだった。
整理券を受け取り、大きな荷物をイスにくくりつけて
町へと走った。目指すはバス会社。
ブエノスアイレス行きのバスは明日の早朝発で、
乗車時間60時間、運賃は650ペソ(約2万円)だった。
本来ならこれと同じ料金の飛行機を押えてあったはずなのに…。

バス会社から再びアルゼンチン航空のオフィスへ。
順番はもうすぐだった。
イスが空いてるにも関わらず、
落ち着いていられないため立って待った。

そして順番が回ってきた。
料金を調べてもらうと空港よりもずいぶんと安く、
312ドル(約28000円)だった。
しかも、今日の最終便がまだ空いているという。
プラス8000円の出費になってしまったが、
これなら不幸中の幸い。
南米の意地悪な神様は、最後に蜘蛛の糸を垂らしてくれた。

 

パタゴニアの旅が終わった

再びタクシーの車窓。
慌てふためいたため、
感動も刹那さもどこかへ消えてしまった。
ただただ、疲れだけが重くのしかかった。
今度こそ、終わったんだよね?
最後にとんでもないオチが付いたが、
パタゴニアの旅は色濃いものとなった。
これはこれで良かったのかも?
そう思わなければやってられないよ…。

ブエノスアイレスの宿に着くと深夜2時を回っていた。
ひとしきり今日の武勇伝(?)を語り、
気が済んだところで眠りに就いた。

明日は「ウルグアイ」へ行く。
よかった、フェリーのチケットが無駄にならなくて。

 

旅のカケラ/slideshow

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