もし、アイドルになりたいのなら
パキスタンに行ってみるといい。
なーんて、石田依良の
『池袋ウエストゲートパーク』調で書いてみた。
アイドルってこんな気分?
今はパキスタンのペシャワールにいる。
相変わらずの親日ぶりで、
おちおち通りも歩けない。
目が合うと必ず近寄ってきて、
HELLO、HOW ARE YOU?と問いかけてくる。
もちろん握手も忘れない。
たとえ目が合わなくったってお構いなし。
ハロー、ハワユー?
えぇ、そんな遠くからかよ!って手を降ってくる。
アイドルってこんな気分なのかな?
まぁ、悪い気分じゃないから
声の主を見つけては手を振り返し、
寄ってくる人たちには丁寧に応対して歩いた。
ギンギラバス
さて、今日はペシャワールの旧市街を探索。
名物のギンギラバスに乗って数キロ先の街へと足を伸ばした。
ギンギラバスとは、パキスタンのローカルバスの呼称で、
文字通り、無意味に派手派手しいバス。
ジャラジャラと装飾品をつけ、外装はもちろん、
窓枠から天井、ハンドルまですべてが暑苦しいくらいにゴージャス!
デコトラならぬ、デコバスがこの街の顔だ。
しかもこのバス、決して停まってくれない。
バス停などというものがないため、
乗客は目当てのバスを見つけると
ダッシュして併走し、タイミングよく飛び乗るのだ。
車内はギュウギュウ詰めで、車体にしがみついている人も多い。
さらに降りるときも大変。
停まらないのだから飛び降りるしかない。
進行方向に向かってジャンプし、
そのまま反動で数歩進んでようやく落ち着く…。
ちょっとだけジャッキー・チェンになった気分だった。
旧市街
旧市街は、細い路地が入り組み、
所狭しと店が並んでいる。
八百屋通り、菓子屋通り、金物屋通り…
なかには歯医者さん通りもある。
相変わらずの歓迎を受けながら、
ひとしきり通りを練り歩いた。
午後もあてもなく街をぶらつくことに。
本来なら「タフティバーイ」という世界遺産に登録されている
ガンダーラ遺跡に行く予定だったのだが、
「そこはタリバンのトライバルエリアだ」と言われ、
さすがに怖気づいてしまった…。
信号待ちをしていたバイクと目が合った。
ハロー、ジャパニーズ?
「私は中国人です」(KAZ)
とっさに嘘をついてしまった。
オー、ニーハオ!
あれ、結局どっちでも関係ないのね…。
「嘘、嘘。日本人だよ」(KAZ)
オー、オゲンキデスカ?
バイクを停め、にじり寄ってくる。
「チャイを飲みませんか?」(スーリム)
会話のふた言目がチャイ屋への誘いだもの、
どこまでも人なつっこい国だよ(笑
どうせ暇だしいいか。
OK、と返事をし彼のバイクにまたがった。
チャイ屋でパキスタンのインフレ問題や、
インドとの関係の悪さを聞いた。
チャイ屋から甘味屋へと場所を変え、
延々とつづく彼の話に相槌を打つ。
知らない街
時刻は夕方。そろそろ帰宅するという彼に
家はどこだと訪ねた。
知らない街の名が帰ってきた。
「じゃあ、そこまで乗せていってよ」(KAZ)
知らない街へと風を切る。
大きなモスクがある通りで降り、スーリムに別れを告げた。
さて、ここからどうやって帰ろうか。
バスは使わないことにしよう。
勝手にルールを決め、「新市街はどこ?」と
何度も聞きながら足を進めた。
ふいにタンガと呼ばれる馬車が横切った。
荷台からハロー!と威勢のいい声が飛んでくる。
しめた(ニヤリ)
おもむろに近づき、乗っていいかと尋ねた。
もちろんお金はないけど!といいながら。
カッポカッポいいながら夕暮れの街を走る。
馬車の荷台は小気味いい音を響かせながら
適度に揺れて気持ちいい。
だらり、と横になり、流れる景色を追った。
あ、見覚えのある建物だ!
ストップ!と馬車を停め、
礼を言って荷台から飛びおりた。
再びカッポカッポと街に溶けていく馬車。
その姿が見えなくなると、街は夜の風に変わっていた。
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