早朝に成都を経ち、目指すは世界遺産「黄龍」。
氷河侵食でできた大規模なカストル地形で、
3500個余りの湖が段々畑のように分部する。
それらが金色に輝き、上空から見ると
龍が山を登る姿に見えるため、黄龍と名づけられた。
空が茜色に染まる頃
5000m級の山々に囲まれた道をバスは行く。
石造りの家々、段々畑、カラフルな旗。
豪快なクラクションを轟かせながら、
いくつものコーナーをすり抜けた。
空が茜色に染まる頃、
バスは「川主寺」という町で停まった。
ここから黄龍までは50km。
すでに乗り継ぎのバスはなかった。
まぁ、急ぐ旅でもないか…。
バス停の近くに宿をとり、
明日の朝イチで黄龍を目指すことにした。
川主寺
川主寺という町は松潘県の北部に位置し
標高3000メートル近い。
そのため、とにかく寒い。
宿はエアコンがなかったので、
バックパックからフリースとダウンを引っ張り出し、
布団の中でぶるぶると震えた。
ここは九寨溝や黄龍に行くための交通の要所で、
豊富な観光資源と特色ある民俗文化を
持っている町だと言われている。
また、ここはチベット文化圏にほど近く、
タルチョが夕刻の空にはためき、厳かな雰囲気だ。
町はずれの寺院に行ってみると、マニ車を回す列があった。
マニ車とは、お経が入った筒のことで
これを1回まわすとお経を1回唱えたことになる。
町の人たちにあやかって、
マニ車を回しながら寺院を歩いた。
「あれ、まあ」と、
もの珍しそうに微笑みかけてくる人々。
チベタンの風習
どこからか子どもたちが集まってきた。
みんな顔にバターを塗っていて真っ黒だ。
これもチベタンの風習で、厳しい寒さをしのぐ知恵だとか。
物怖じしない彼らは、足元にまとわりつき
「こっち、こっち」とどこかへ促す。
マニ車を回す手を休め、彼らについていくことにした。
荘厳な壁画や唐獅子、大きなマニ車。
彼らは優秀なガイドだ。
そして、「ハイ!ハイ!」と、今度は写真を催促。
どうだい?撮った写真を見せると、
満足気な表情になった。
親たちはまだマニ車をまわし続けている。
子どもたちは、相変わらずまとわりついて離れない。
日が沈み、風が冷たくなってきた。
気がつけば、吐く息が白い
「再見(またね)」と手を振り、別れを告げるも
どこまでもついてくる。
親たちも遠くから呼んでいるが、お構いなしだ。
仕方ないので走ってこの場を去ることに。
すると、鬼ごっこと勘違いしているのか
キャッキャと、楽しげに追いかけてくる。
もう、キリがないって…!(苦笑)
子どもたちの声がしだいに遠くなる。
足をとめたい衝動にかられながらも、
背中で何度も“サヨナラ”と合図した。
気がつけば、吐く息が白い。
日本を離れた、あの朝と同じだった。
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