インドに死す…。

かつてチャンデラの王たちの首都であったカジュラーホは、
荘厳な寺院跡が残り、精巧に細工が施された彫刻が特徴。

 

インド・アーリア建築

10~12世紀にかけてチャンデラ王朝によって建てられた寺院は、
インド・アーリア建築の美しい見本であり、
中世インドの芸術と建築を垣間見られる世界遺産である。
中でも無数に施された「ミトゥナ」と呼ばれる官能的な彫刻が有名。

さて、早朝6時、ホテルからは目と鼻の先にある寺院群に向かった。
ここカジュラーホは暑さが尋常じゃないことと、
建物の向きに配慮した(逆光にならないように)ことが早起きの理由だ。

外国人料金250ルピー(約700円)を支払い、
1番目の客として門をくぐった。

 

観光ではなく、敢行

ここ西群の寺院は10のお寺で構成されていて、保存状態も良い。
遺跡公園として整備されているため、
緑が多く、ブーゲンビリアが咲き誇っていた。

昨夜の雨のせいか、湿気がひどく
こんな時間でもすでに蒸し暑い。
そして悪いことに、昨夜から体調不良に悩まされている。
旅立ってからというもの、相方のヒロが体調を崩した後は
必ずといっていいほど、同じような症状に陥る。
律儀に彼の風邪(?)をもらってしまうのだろう…。

しかし、今回の体調不良は手ごわい。
中耳炎のように、自分の声が聞こえづらく、激しい嘔吐を繰り返す。
そんな状態で世界遺産を見て回るのだから
もはや観光ではなく、敢行と呼んだほうが正しいのかも(笑

 

陽炎のように寺院が霞む

1つの寺院を見ては、木陰で横になり、
重たい身体を引きずって次の寺院へ向かう。
そして9時を過ぎた頃には気温は40度に達した。
朦朧とした意識の中、陽炎のように寺院が霞む…。
一眼レフがとても重たく感じられた。

すべての寺院を見終わるのに4時間以上もかかってしまった。
まったくもって、ゆとりのない観光だったが
それでも充分に満足感は得られた。

お次はラジオの収録だ。
宿に帰って準備をしなければ…。
週に1回のラジオ収録もなんとか無事に終え、
ベッドに倒れこんだ。
温度計を見るのも嫌になるほどの暑さに、
まったく食欲はわかないので、とにかく水だけは摂取した。

辛い1日はまだ終わらない。いや終われない…。

 

それでもカメラ片手に

実は昨日乗せてもらったリキシャとの約束があるのだ。
彼とは、東群、南群、そしてオールドビレッジの観光を
約束していた。
インド人のいい加減さに腹を立てている以上、
約束を破棄することはできない。
日本人としての誇りを失わないためにも。
鏡を見ると真っ青な顔。
それでもカメラ片手に彼の元へと向かった。

ハーイ♪と、笑顔で登場したラクハン。
力なく笑顔を返し、リキシャに乗り込んだ。
「どーした、KAZ? 調子が悪いのかい?」
その心配そうな表情にいくばくか安堵し、
「寝てるからのんびり連れてってよ」と、すべてを彼に託した。

うつろな目でも、しっかりと景色を眺め、
ときどきシャッターを切った。
約3時間で10ほどの寺院を訪れ、
なによりも体調の回復を祈願した。
揺れるリキシャ、午後の生ぬるい風に
自分の身体が溶けていくように感じられた。

近くのレストランでトマトスープを注文し、
風邪薬、胃薬、正露丸、ビタミン剤を
まとめて流し込んで部屋に帰った。
インドで襲われた原因不明の体調不良に
果たして日本の薬は効くのだろうか?

 

いよいよダメか…

目を覚ますと真夜中だった。
急な吐き気にトイレに駆け込んだ。
そして真っ赤な吐しゃ物…。
なんじゃこりゃ!
ドラマで毒を盛られ、血を吐いて倒れるシーンがあるが
まさしくその状態。

あぁ、いよいよダメか…。

胃がねじれるように痙攣し、すべてに絶望しかかっていた。
身体がからっぽになり、ようやく胃の痙攣が治まった。
よく考えてみればこの赤はトマトだ!
血とトマトの区別ができないほど衰弱しきった身体。

もうインドは嫌だ…。

 

旅のカケラ/slideshow

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