ハルタビ ’19(中欧編) ♯11 満月の夜なら

国境で渋滞につかまったため
ドゥブロヴニク(クロアチア)の旧市街に戻って来れたのは15時過ぎ。

途中、荷物を預かってもらっていた宿からも
心配して電話がかかってきたが、
うまく状況を伝えられずやきもきした。

 

魔女の宅急便

今日で3泊目となる宿「ヴィツェリ」は
気さくなお母さんと、快適な部屋が心地よく、
次回また訪れる機会があればこの宿を利用しようと思う。

さて、ようやく旧市街を観光できる。
というのも、雨が降ったり、隣国へ行ったりと、
なかなか機会に恵まれなかった。
今日はこの旅一番というくらいの快晴!
待った甲斐があったというものだ。

ドゥブロヴニクは614年に誕生。
その後ラグーサ共和国として繁栄を築いてきた。
「アドリア海の真珠」と呼ばれる海洋都市で、
堅牢な城壁に囲まれている。
ジブリアニメ『魔女の宅急便』のモチーフになった街とも言われている。

 

中世の散歩

午後4時、まずはフランシスコ会修道院に併設している
マラ・ブラーチャ薬局を覗いてみた。
創業は1317年で、世界で3番目に古いそうだ。
(2位は数日前にウィーンで訪れたエンゲル薬局)

ローズウォーターやクリームが人気のようで
買い求める長い列ができていた。
ローズウォーターは1本3000円ほどしたが、
レトロでオブジェにも良さそうなので2本買うことにした。

街歩きは明日の朝に回し、
旧市街を取り囲む城壁めぐりを優先した。
事前情報では150クーナ(約3000円)だったチケット代は
200クーナ(約4000円)に値上がっていた。

この街に来て、城壁めぐりをしない人は皆無なので、
足元を見られた料金だ…。
この街はこれまでの歴訪国の中で
一番の物価かもしれない。

でも、この快晴のもとで城壁めぐりできるのだから、
ある意味得したのかも。

 

天空の遊歩道

ドゥブロヴニクの旧市街をぐるりと囲む城壁。
この城壁は9世紀に建築がはじまり、
15世紀にはオスマン=トルコからの攻撃に備えるため、
四隅にはボカール要塞、イヴァン要塞、レヴェリン要塞、ミンチェタ要塞の
4つの城砦を設けている。

照りつける太陽の光をまともに浴びながら、
急勾配の階段を登り、城壁に立つと
視界にはオレンジの街並みが広がった。

これはすごい!
たしかに『魔女の宅急便』の世界だ。
何度も映像や写真で見た景色だが、
実際に目の当たりにすると
感動的な美しさだった。

城壁の全長は約2㎞あるので、
ゆっくり歩くと1.5時間ほどかかる。しかし、
数歩歩いてはシャッターを切りたくなる牛歩状態なので、
一周するのに2時間以上かかってしまった。

青い空と、青い海と、オレンジの屋根。
潮騒と教会の鐘。
陽射しに目を細めながら
どこまでも続く絶景を眺め、
風に吹かれ歩く。

この時間を幸せと呼ばずになんと呼ぶ。

 

アドリア海の幸

この中欧の旅では、7つの国を巡ったが、
それぞれに個性があり、
毎日が慌ただしく過ぎていった。
もう、日本を離れて何日経ったのかも
あいまいになってきて、旅が日常になったような感覚だ。

陽がだいぶ傾いた頃、
元の場所に戻ってきて、城壁を降りた。
こうしてまた1つ、目的を果たし、
旅の終わりが近づいてくる。

夜は奮発して、
アドリア海の幸を食べに
「MIMOZA」というレストランを訪れた。

タコのサラダや生牡蠣、イカ墨のリゾット、
魚介スープなど、とても満足な内容。

これでクーナ(クロアチア通貨)をほとんど
遣い切り、残りは空港に向かうバス代と、
行きつけのジェラート屋の分しか残らなかった。

店を後にするとすっかり夜で、
街角にはチェロやサックス、オペラの歌声が響いていた。
みなワインを傾けて、海辺の夜を謳歌している。
漏れ聞こえる音楽が心地いいので、
細い路地をでたらめに歩いてみた。

夢の中を彷徨っているような
ふわふわとした感覚を覚え、
いつか訪れた中東のバザールの夜によく似ていた。

 

旅のカケラ/slideshow

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