こけし旅’19(福島編④)中ノ沢こけし

異色の表情で目を引くのは、
「たこ坊主」の愛称をもつ「中ノ沢こけし」。
11系統ある伝統こけしの土湯系(福島)に含まれるが、遠刈田系の影響も見られる構造や独自性から、系統独立を目指している。
昨年末のニュースで、伝統こけしの12系統目になりそう、という記事を見つけた。

創始者は栃木出身の木地師・岩本善吉。
たこ坊主の顔は、善吉が逆立ちして踊った「逆さかっぽれ」の際に、
股に挟む張り子に描いた顔がもとになったという説もある。

 

実は中ノ沢こけしは日本橋にある、
福島のアンテナショップで購入している。
前回のこけし旅では近くには行ったものの、
どこで購入できるかがわからなかった。
帰宅後に観光協会に電話をすると、
アンテナショップに置いてあると言われ、
そこで入手した。
磯川盛男工人の作品だった。

さて、今回は事前に下調べをし、
中ノ沢こけしの工人でつくる「たこ坊主会」の会長にアポを取っておいた。

教えてもらった住所に行くと
柿崎文雄工人は工房でこけしを作っていた。
木地挽きの作業中で、
木取りした用材をロクロで回転させながらカンナをかけて思いの形に削っていく。

 

絵付けも見せてくれた。
回るロクロにそっと筆を下ろすと、
キレイな円が描かれていく。
こういう手仕事は本当にすごいと感心させられる。

居間に通されいよいよ中ノ沢こけし、
たこ坊主とご対面。
古めかしい箪笥の中からぞろぞろと出てきた。
「今年はこれで、去年はこれを作って…」と、表情や胴の模様が毎年変わっていた。

50体ほど登場し、どれも魅力的で選ぶのがとても迷った。
この幸せな悩み、楽しい。

 

「たしか青坊主もあったなぁ…」
と、希少な青坊主を2本出してきてくれた。
少々値ははったが、滅多にお目にかかれない作品なのですぐに購入を決めた。
そのほかにも気に入った2体を選び、
合計3体を連れて帰ることにした。

 

柿崎さんはとても優しく、
こけしづくりに対する情熱がとても強かった。
「次はこのこけしを作ろうと思う」と、
古い作品の写真を見せてくれた。

たこ坊主はユニークな表情が多く、
変化に富んでいるので集めるのが楽しい。
きっと12系統目になるだろうし、
次に来る楽しみがまた増えた。

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